7年後 葛西さんの12月28日

PRRRRRR・・・

PRRRR・・・

ガチャッ

『はい、久保田です』
「おう、誠人か、俺だ」
『葛西さん?』
「おうよ、久しぶりだな、元気してるか?」
『ぼちぼちね』
「時坊は?」
『それこそ元気よ、今出かけてる』
「そうか、んじゃ1月3日には顔出すからって伝えといてくれ」
『ああ、新年会のことね。分かった伝えとく』
「今年は勝つぞ」
『楽しみにしてるよ、あ、時任が帰ってきた。ちょっと待って』

電話の先でくぐもった声が聞こえる

『時任、葛西さん3日に来るって、代わる?』
『代わる、かしてっ』

ガサゴソと音がした後に元気な声が聞こえた。

『おっちゃん?』
「おう、時坊か元気そうだな」
『おっちゃんこそ、3日に来れるんだって?』
「ま、その頃にゃ今のヤマも片付いて帰れるだろうさ。それまでお節残しといてくれや」
『分かった、けど栗きんとんと鰻巻き卵は保障できないかんな』
「数の子さえ残してくれればいいさ、酒はこっちで用意する」
『わーった、んじゃ3日にな!良いお年を!』
「良いお年を」

ピッ!

お節に新年会なんて人並みな正月を迎えるようになったもんだ。
自分も甥も年中行事なんて頓着しない性質なので同居してる時はろくな正月をした覚えが無い。
こんな風に新年に約束するようになったのは時坊が来てからだ。
最初は年末と正月の挨拶を交わすだけだったのに、なんとなく新年に顔を出すようになり、そこにお節が加わって新年会もどきをするようになった。しかも2年前からお節をつついた後で麻雀をするのが常になっていた。

「時坊のお陰だな・・・ホント人間らしくなったもんだ」

お節や新年会の用意をするのは主に誠人だが言い出すのは時坊だろう。時坊が言い出さない限りは全く何もしなかったに違いない。

「あれもいい嫁を貰ったというんだろうなぁ」

あいつがあんなに尽くすタイプとは思わなかったなぁ、と二人を思い出しながら一人笑う。

「さて、新木が騒ぐ前に戻るか」

呟きながらタバコを揉み消す。実は捜査本部から抜け出して一服していたのだ。
可愛い、もとい、可愛くない甥っ子とその可愛い嫁(?)に会いに行くため舅はさっさと仕事を終わらすべく本部へと歩き出す。
心なしか足取りが軽いようだった。

警察は365日24時間営業なので年末年始もあったもんじゃない。

それでも人並みな正月を迎えるべく努力するのだった。








NEXT 12月29日
 
それぞれの年越しを7年後シリーズで5話に分けてお送り致します。
トップバッターは葛西さんです。すっごく好きですが真面目な葛西さんは初書きです。彼は絶対嫁(笑)びいきなお舅だと思います。CD2巻でも時任贔屓だったしね!彼には数の子齧りながらちびちび日本酒飲んで、時任と談笑しつつ、久保田を叱りつけるという穏やかな正月を迎えて欲しいものですv

2006.12.30
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