じゃじゃ馬5
時任は相浦の家を出て、久保田が待っている家へ向かっていた。
歩きながら相浦が言ったことを思い出していた。

『久保田の一番から二番になってもいいのかよ?』

俺が久保ちゃんの一番じゃなくなる可能性なんて考えてみたこともなかった・・・
久保ちゃんはいつも隣にいるのが当たり前で、何でも一緒にするのが当たり前で、自分以外の誰かが久保ちゃんの隣に立っているなんて考えたことも無かった。
もしそうなったら・・・絶対、我慢できない

「これも立派な独占欲だよな・・・」

久保田の一番は自分のもの、これは誰にも譲れない
気付いてしまった独占欲

「でも昨日みたいなことしたい訳じゃねーしな・・・」

あーいうことは女の子としたい。今気になる相手がいるわけではいないけど、やっぱり女の子は可愛いと思う。押し倒すなら女の子がいいに決まってる。

久保ちゃんはどう思ってるだろう・・・?
俺とどうしたいだろう・・・?
ずっと俺の相方でいたいと思ってくれてるだろうか・・・?

聞くのが怖い、けれど、聞かないと分からない。

自分と同じようにずっと一緒にいたいと思ってくれればいいと願いつつ

答えを求めて家路を急いだ。



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 



午後6時、最後に時任とあってから約4時間が経過していた。
一体どこに行ってるんだか・・・
そう思った途端ドアの方から騒がしい音が聞こえてきた。
時任が帰ってきたらしい。

ガチャッガチャガチャッ
バタンッ!

「久保ちゃん、ただいま〜」

時任がリビングに顔をだした。

「おかえりー」
「二日酔いどうだ?治った?」
「もう平気」
「久保ちゃんメシ食ったか?」
「これからうどんでも作ろうかなって思ってたとこ、食べる?」
「食べる!」
「んじゃ、ちょっと待ってな」

いつも通りの会話、朝のぎこちなさが嘘のようだ。
時任が言ってたように、なんでもないようなことだったのだろうか・・・

ぼんやりと考えながら、鍋に冷凍うどんを入れてつゆを注ぎ、上に肉とキムチとネギをのせてそのまま煮込む。5分くらい待てば即席キムチうどんの出来上がりだ。

「お待たせ〜」
「サンキュー!久保ちゃん!」
「洗い物はお前ね」
「え〜〜〜〜っ!」
「んじゃあげない」
「わかったよ!」
「んじゃ召し上がれ〜」
「ちぇーっ」

時任ははふはふ言いながらうどんを平らげていく、猫舌なので熱いのが苦手なのだ。どんぶりに顔をつっぷしながら食べてる姿は猫に餌付けしてる気分になる。

「何だよ?」

視線に気付いたのか時任がどんぶりから顔を上げてこっちを見た。

「いや、おいしそうに食べてるなぁと思ってさ」
「美味いぞ?」
「そりゃどうも」

ひとこと言ったきり、再び時任はうどんを食べ始めた。
顔を伏せながら食べるので頭のてっぺんしか見えない。
身長があるのもこういう時は考え物だ。

仕方なく、時任のつむじから、うなじまでぼんやり眺めていた。

そして、ふと、時任の首筋が目に入る

そこには赤い、虫に刺されたような痕があった

ザワリと血が騒ぎ、体温が下がった気がした・・・

「・・・時任、今までどこ行ってたの?」

静かに問いかけた。
普通の声が出せるのが我ながら不思議だった。

「相浦んとこ」
「何してたの?」
「・・・DVD見てた」

・・・わざわざ相浦んとこでDVD観るなんて、ね。
ゲームっていうなら分かるけど、DVDなんて嘘くさい。
じゃぁ、一体、何してた?

「DVDねぇ・・・んじゃ、これは?」
「え?」
「観てるだけじゃこんなの付かないでしょ?」

そう言って、時任の首筋に付いた赤い痕に、指を這わせた。

ガタッ!

時任が俺の指から逃れて席を立った。
真っ赤な顔して首筋を俺から隠すように押さえている。
その態度で虫刺されでは無く、キスマークだとはっきり分かった。

・・・まぁこの季節に蚊がいるはずないもんね・・・

そんな、呑気なことを考える自分が可笑しく、ふふふ、と自嘲する。
それでも頭の中は静かに煮えたぎっていた。

人間て、本当に怒ると、かえって笑っちゃうのかもね

怒る?誰に?時任に?自分に?それとも見知らぬ誰かに?
多分、全部

「久保ちゃん・・・?」

時任が訝しげに俺の名を呼ぶ、俺に対しては警戒心の薄いこの猫は、今なら逃げられるのに、逃げもせずその場に立ち尽くしていた。
笑っている俺にとまどっているようだ。
無防備なお前が悪い、と心の中で言いつつ、近づいて、時任の顔を両手で挟み込み、顔を近づけて囁いた。

「正直に言いなね、誰と、セックスした?」

これは、警告
正直に言えば酷いことはしないつもりだ、・・・多分

「しっしてねーよっ!」

せっかくの警告なのに、時任は無視して嘘をつく。
これは、お仕置きが必要だよね?

時任の腕を掴み、ソファに引き倒した。
片腕で時任の両腕を拘束し、体重をかけてソファに押し付ける。
腰に馬乗りになって腕に体重をかける。
体格差があるので簡単に押さえ込めた。

これで、もう逃げられない。

「!!っ久保ちゃんっ何すんだよっ!!」
「時任嘘つくんだもん、だったら、体に聞くしかないっしょ」

そう言って、時任の着ているシャツに手をかけて、一気に引き千切る。
ボタンが弾け飛び、顔に当たった。

「!!!!!」

時任が声にならない悲鳴をあげて息を詰める。
思ったとおり、胸元にもいくつかの痕があった。

「ここと、ここにもキスマークがある、なにのまだ、セックスしてないなんて言うの?」

痕を一つ一つ指でなぞりながら尋問する。

「してないっ!離せよっ!」

お前がこんなに往生際悪いとは思わなかった。
時任のGパンのチャックを下ろし、時任自身を直に握りこむ。下着の中は微かに湿っていて、時任自身も少し湿っていた。

「!!!ヤッヤダッ!止めろよ久保ちゃんっ!!」

手を引き抜いて指の臭いを嗅ぐ、精液の臭いが、かすかにした。
キスマーク、湿った下着、そして精液の臭い、これでセックスしてないなんて、ねぇ
笑っちゃうよ?

「ねぇ、誰とセックスしたの?」
「してねぇっつってんだろ!!!」

まだ、しらばっくれる。
・・・どうなっても知らないよ?

再びGパンの中に手を潜らせ、時任自身を握りこむ。今度は握るだけでなく、明確な意思を持って動かす。

「!!!!ヤメロツ!!」

時任の静止の声を無視してより一層激しく動かす。すぐに、硬くなってきた。時任の息も荒くなり、声を殺して耐える姿がそそられる。その首筋に舌を這わせて、目障りな赤い痕の上から更に痕が付くようきつく、吸い上げる。

「ヤッ・・・!!」

時任は堪えきれなくなったように、声を漏らした。
すごく、可愛い、けど、その可愛さが、今日は酷く腹立たしく、憎らしい。

「ね、時任、誰とセックスした?」

最後にもう一回聞いてみる。
時任はぶんぶんと首を振って否定の意思を見せた。

「・・・じゃ、泣くまでイッてみる?」

時任を握る手に少し力を加えて脅してみる。
これが最後通牒、これで答えないのならどんなに泣き叫んでももう止めてやらない。
本気が伝わったのか、時任が身を縮めた。

「くぼちゃん・・・」

よく聞こえない。

「誰だって?」

キッと時任が俺を睨みつけた。

「久保ちゃんだよっ!馬鹿ヤロー!!!」

唐突に、時任が叫んだ。
・・・俺?

「昨日、酔っ払った久保ちゃんが俺のこと押し倒して、キスして、痕つけたんだよっ!!それだけっ!誰ともセックスなんかしてねーっつの!!!!」

・・・キスマークをつけたのは俺だって?
だから、今朝はやけにギクシャクしてたのね・・・
じゃ、精液の臭いは・・・

「気晴らしに相浦んとこでAV観て抜いただけだよっ!」

AV観ただけ・・・
なんだ、そんなことだったのか・・・

「昨日のこと何で言わなかったの」
「お前が忘れてるのに言えっこねーだろっ!!キレイさっぱり忘れやがってっ!こっちはすっげー悩んだんだぞっ!!!」

そりゃそうだ、俺だって言わないだろう
脱力した・・・

「ごめんね」

謝りつつ、腕の拘束を外し、ズボンに入れてた手を抜き出す。それでも離すのが怖くて、ぎゅっと腕の中に時任を抱き込んだ。時任は一瞬身を硬くした。

「もう何もしないから・・・」

そう言ってあげると、時任はゆっくりと体の力を抜いた。
暖かい・・・
そして安堵する。
時任に酷いことをせずにすんだことと
時任が誰のものにもなっていなかったということに

「良かった・・・」

つい、安堵のため息とともに本音が漏れる。

「・・・何が良かったんだよ、俺は散々だ」

ぼそりと時任が文句を言った。
確かにそうだろう、昨日は俺に襲われ、今日はその元凶に嫉妬されてまた襲われたのだ。散々としか言いようが無い。
だから、もう一回謝ってみた。

「ごめんね」
「・・・昨日も、お前がこういうことしてさ、俺びっくりして、久保ちゃんがちゃんと見れなくて、家にいるのが気まずくて、気晴らしに相浦んとこ行ってたんだ・・・」
「そう・・・」
「そしたらさ、相浦が『久保田はお前を欲しがってるが、お前はどうなんだ?』って言うんだよ。なぁ、酔ったはずみじゃなくて、前からこういうことしたかったのか?」
「・・・うん」

今更隠しようが無いので素直に頷く、腕の中の時任が、息をのんだのが分かった。抱きしめていた腕をほどいて、時任の顔を覗き込む。
怖がっても、嫌がってもいない、どうしよう、そんな顔をしていた。

「時任、俺はね、ずっとずっとお前が好きで、欲しかった・・・。お前は?」
「俺は・・・久保ちゃんが一番好きで、一番大事だけど・・・けど・・・そんなの考えたこと無かった・・」
「知ってる。けど・・・俺はお前が一番大事で、一番欲しい・・・」
「・・・」
「ねぇ、お願いだからお前をくれない?そしたら俺のこと全部あげるから」

時任の顔を手で挟んで目を合わせる。時任の目は、迷いで、潤んでいた。
もし、このまま時任が俺を拒否したらどうしよう・・・そしたら時任のいないとこへ行こう、そんなことを考えていた。多分俺は随分必死な目をしていたのだろう、犬が飼い主を見つめるように。『捨てないで』と言うように・・・
辛抱強く、時任の答えを待つ。
やがて、時任が口を開いた。

「久保ちゃんは久保ちゃんだけのもんだし、俺は俺だけのもんだ」
「うん」
「・・・でも久保ちゃんのものは俺のもんだしな」
「うん」
「俺のもんも久保ちゃんにあげなきゃ不公平だよな・・・」
「うん」
「・・・仕方ねーから、俺のもんもお前にやる・・・」
「うん、・・・ありがとね」
「大事にしろよ」
「うん、キスしていい?」

こっくりと、時任が頷いてくれたので、ゆっくりとキスをした。
昨日は覚えてないから、これが、初めてのキスだ。そう思ったら、なんか笑っちゃうくらい真剣に、ゆっくりと時任の唇を味わった。

なんか、今死んだら迷わず成仏できそう・・・
すごく、満足だった。
けど、そう思ったのも束の間、人間とは欲深いもので・・・

「おいっ何手を動かしてやがんだっ!変なトコに手入れんじゃねーっ!!」
「だって・・・くれるって言ったじゃない。ほらもらっとかないと、ね?」
「って今すぐかよっ!お友達からとか順序ってーのはねーんかよっ!」
「・・・今更お友達ってどうよ。順序って言ったら昨日キスもしたし触っちゃったらしいし?、次は・・・ねぇ」
「ねぇじゃねえっ!、調子にのんなっ馬鹿っ」
「イーヤー、・・・ねぇ、ホントに嫌?」
「・・・・・・・・・・久保ちゃんずりぃよ」
「うん、ごめんね?」
「ホントは悪いって思ってねえくせして・・・」
「ちょっとは悪いなあと思ってるよ?俺が我慢できないだけだから」
「////我慢出来ないゆーなっ!」
「じゃ何て言えばいい?」
「・・・馬鹿」
「うん、時任馬鹿だから」
「・・・手加減しろよ」
「善処します」

観念したように、時任が体の力を抜いてくれたので、抱き上げて寝室に向かった・・・





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ワンコが調子に乗りました。誰か蹴ってやってください。私が一番蹴りたいです。えー次はやってます。露骨な表現はないのですが苦手な方はご遠慮下さい。
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