じゃじゃ馬3
朝日が目にしみて目が覚めたと言えば爽やかな朝の迎え方かもしれないが
あいにくと最低、最悪な気分だった

頭が割れるような痛さとはこのことか・・・
ズキズキと普段の頭痛とは違う痛みと眩暈に襲われる

「これが噂の二日酔いね・・・」

あまりのだるさに再びベッドに沈みながら一人ごちる。結構イケルクチだが羽目を外して飲むなんてことは無かったので初めての経験だった。

明らかに飲みすぎだ
結局昨日はどんぐらい飲んだっけ・・・?
日本酒1升に焼酎1本に・・・最後何飲んでたっけ、憶えてない・・・

あ、確かワインだ
最後に注がれたけど飲めずにテーブルの上で寝たような覚えがある
今ベッドの中にいるということは自力で移動したか時任が運んでくれたんだろう

時計を見ると午後2時、随分ゆっくり寝てたらしい

のどが渇いたので水を飲みにベッドから降りて寝室を出てキッチンに向かう

時任はリビングで寝てるのだろうと思ったけど見当たらない

・・・風呂場か?

ガチャガチャ、キイ、バタン

キッチンで水を飲んでると玄関の方から音がした、どうやら時任は出掛けてたらしい。

「時任?」
「っ!?久保ちゃんっ」
「?おはよ、コンビニでも行ってたの?」
「お、おう・・・あー・・・気分は?」
「最悪・・・お前飲ませすぎ・・・」
「ポカリ買ってきたけど飲むか?」
「うん、いる」

時任からポカリのペットボトルを受け取ってそのまま直に口をつけてごくごく飲む。

・・・体に染みるとはこのことか
ポカリをこんなに美味く感じるのは初めてかもしれないねー

半分くらい空けたら頭がスッキリしてきた
人心地ついてふと見ると時任がこちらをじーっと見ている

「時任も飲む?」
「っ!?、イヤ、イイっ!」
「そう・・・で、満足した?」
「な、何が?」
「だから俺を酔い潰れさせたかったんしょ?、満足した?」
「・・・お、おう・・・」
「?何かさっきから変だね、お前」
「そ、そうか?」
「うん、歯切れ悪いし、珍しく買い物行ってくれたり、飲んだ後片付けしてくれてたりするし、・・・どしたん?」
「俺だってたまには気ぃ使うぞっ」
「まーねー、・・・憶えてないけど俺何かした?」

時任がぶんぶんと頭を振る、・・・何かしたらしい。

「吐いてリビング汚しちゃったとか?」

更にぶんぶんと頭を振る

「んじゃ、たまには家事手伝えとか、ゲーム片付けろとか、言ったとか?」

またぶんぶんと頭を振る

「・・・まさかと思うけどお前のこと殴ったりした?」

今度は激しくぶんぶんと頭を振った、ちょっと安心した

「・・・久保ちゃんは何もしてねーよ。酔い潰れて寝ちまっただけ。酔っても暴れたり陽気になったりもしなかたった。眠そうになっただけでつまんなかった」
「・・・人にあんだけ飲ませてといてあんまりな言い分ね。んじゃどうして俺から目そらすのよ?」
「・・・なんでもない、久保ちゃんには関係ねー」
「ふーん?」
「それよか久保ちゃん味噌汁飲むか?インスタントだけど買って来たぞ、あと弁当も」
「うーん、まだ食欲まではね・・・。も少し寝てから食べる」
「ん、じゃー冷蔵庫入れとくな」
「うん」

ホントなら寝室で寝たいとこだけどなんとなく時任の様子が気になるのでそこから離れがたく、毛布を被ってソファに横になる。

なんでもないって言うけれど、絶対なにかがあったに違いない
そのきっかけを作ったのは恐らく自分

もし襲ってたらあんな元気には動けてないだろうし
第一あんなに泥酔してちゃ勃つもんも勃たたないしね

にしても・・・時任に『久保ちゃんには関係ない』って言われるなんてね・・・
自分が言ったことはあっても言われたこと無かった

言われたら腹立つもんなんだねー・・・

後でしっかり白状させよう

そんなことをつらつら考えながら再び眠りについた



 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 



「・・・久保ちゃん?」

ソファを見るとすでに寝ていた。

「言えるわけねーっての・・・」

酔って目ぼけた久保ちゃんにキスされてちょっと触られたくらいで勃っちまったなんて、ぜってー言えねーっ!!!
しかもなんか意識してしまって久保田を見るのが恥ずかしい
そんでもつい口元なんかに目が行ってしまう・・・

そういや、あれが俺のファーストキスなんだよな・・・

・・・やべ、また思い出しちまった

昨夜はあれからトイレで抜いて、リビングの片付けをした
酒瓶が散乱しているリビングを見るとどうも昨夜の行為を思い出してしまいいたたまれなかったからだ

・・・でも、寝室で寝てる久保ちゃんを思うと、どうしても思い出してしまう

結局あーだこーだとうだうだと考えてたら眠れなかった

気分転換に買い物に出かけてスッキリしたと思ったら・・・
駄目だ、寝起きの久保ちゃん見てるとまた思い出してドキドキしてきた

これじゃ俺ってば変態じゃねーかっ!!!

俺様はかわいー女の子が好きだってーの!

大体!俺がこーんなに悩んでるってーのに久保ちゃん憶えてねーんだよなっ!

憶えられてても困るが、すっげー腹立つっ!

あんの巨乳好きが男に迫ったって話したらどういう顔すっか見てみてーよな!

・・・けど、絶対言えねー
後が怖すぎる、なんだかわかんねーけど怖い気ぃする

ったく、これからどういう顔して久保ちゃんと接すりゃいいんだよ・・・

とりあえずシャワー浴びよ


そうして慣れない悩み事にふらふらになりながら
少しでも頭をスッキリさせるべく風呂場へと向かうのだった・・・



 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 



3時間程で目覚めた久保田は早速白状させるために時任を探したが
リビングにも寝室にも風呂場にもいなかった

リビングのテーブルに書置きが1枚

『出かけてくる、帰りはわかんね 時任』

それを見た久保田は

「・・・ふーん、逃げるんだ?」

ボソリと呟き、口の端を上げる

やけに物騒な笑みだった



時任、どこに行った・・・?








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まぁ、皆さんの予想通りだと思います。やっぱり久保ちゃんは憶えてません。時任くん哀れなり・・・
でもまだまだもんもんと悩んでもらいます〜(いじめっ子)

2007.3.9
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