お気に召すままに3 | ||
そろそろ4時限目が始まろうとするころに久保田がクラスに顔をみせた。 「どもー」 「久保田君!どもーじゃないわよっ!もう3時限終わったわよっ!」 「まぁちょっと野暮用で、時任は?」 「避難中」 「何それ」 「朝から大変だったんだから・・・」 桂木はタメ息と共に朝からの出来事を話し始めた。 どうやら昨日の話しを誰かに聞かれたらしく、朝から時任のもとへ男からのクリスマスデートのお誘いが何人も来てそれににいちいち切れる時任が暴れて大変だったらしい。そして休み時間ごとにお誘いが来るので嫌気がさした時任は何処かへ逃げ出したとのことだった。 「へ〜・・・そんなことがあったの」 口調は変わらずとも一段低い声で久保田が呟く。 何を考えてるのか一発で判る不穏なオーラが漏れ出ている。やれやれ・・・ 「どうやら昨日の話に尾ひれがついて『時任は久保田と別れてフリーだから今がチャンス!』とでも思われてるみたいよ?」 「ふ〜・・・ん」 「どうするの?」 「どうもこうも、付き合ってもいなければ別れてもいないんだけどね?」 「・・・そういうことじゃなくてね。まあいいわ、勝手にして頂戴。ただ時任人気を甘く見ると後悔するわよ」 「?」 「今のところ男からばっかだけど女の子から誘われたら時任だってOKするかもよ?時任は俺様だけど案外優しいし、目つき悪いけど笑えば可愛いし、ちょっとナイーブなトコが女の子の庇護欲そそるのよね。久保田君ほどキャーキャー騒がれないけど密かに人気あるんだからね?」 「うん、知ってる」 まあこんなのとっくに承知してるだろうけどね、でも時任のためにもちょっとは焦って欲しいので言わずにはいられなかった。二人がくっついていようがいまいが最高のコンビに違いは無いので出来るだけ早く仲直りして欲しい。なんだかんだ言っても桂木は二人のことを心配しているのだった。 「ま、頑張って」 「うん、ありがとね」 桂木と別れて久保田は時任を探しに教室を出た。 「ま、いるとしたらいつもの場所かね?」 * * * * * お探しの時任は屋上に避難していた。まあお定まりのパターンである。 「ったく、気色悪ぃ、男とデートして何が楽しいんだよ・・・」 「まあなー・・・(久保田と過ごすのはデートじゃないんだろうか?)」 相浦はなんとなく放っとけなくて時任に付き合って屋上に来ていた。 面倒見のいい奴である。 「でもさっきは女の子もいたじゃん。結構可愛い子だったけどいいのか?」 「可愛かったけど好みじゃない」 「好みじゃなくてもデートするくらいいいんじゃない?」 「・・・真剣っぽかったからさ、そういう風には言えねーじゃん」 「確かに、じゃあお前の好みってどんなん?」 「俺様」 「(ナルめ・・・)それって誰とも付き合いたくないってことか?」 「・・・」 「自分しか興味ないってことじゃん、それとも誰か好きな奴でもいんの?」 実際久保田と時任はどうなってるんだろう? 久保田が時任を恋愛感情込みで特別に思ってるのは疑い無いが時任は久保田のことをどう思ってるのだろう?相方以上の特別な存在とは思ってるだろうけど恋愛感情があるかと言えば疑問なのだ。 これは執行部全員の疑問だろう。 「いんや、いない」 即答だった。久保田哀れなり・・・。 「あ、そ・・・」 「久保ちゃんより好きになれるやつなんてそうそういやしねっての」 「・・・」 時任よ、それは「久保田が好き」と言うんじゃないのか? ”好きな人=久保田”と何故思わないんだ?? 普通の男なら女と男友達を秤にかけたらほとんどが”女”に傾く(荒磯が例外なのだ)でも時任は無意識に女より久保田をとっている。友情と恋愛の境なんてほんとはあって無きが如しなのだ。男友達を優先させた時点で友情=恋愛になる可能性は大である。あとは欲情出来るか出来ないかが問題になるのだが時任は性に関して男女ともに興味無いようだ。要はそっち方面じゃお子様なんで久保田をそういう目で見ること自体がないのだろう。 相手がこんな天然じゃ久保田も苦労するよな・・・ 余計なお世話だと思いつつも同じ男としてつい久保田に同情してしまった。合掌。 「じゃどうすんだよクリスマス。誰かと約束しないといつまでも続くぞ?それとも断り続けるか?」 「だよな・・・」 「久保田と早く仲直りした方がいいんじゃないか?そうすれば皆諦めるだろうし」 「ぜってー嫌、俺の問題だから久保ちゃんには関係ねーし」 「(大アリなんだけどな・・・)」 最初の問題に戻ってしまった。 あとどのくらい時任狙いがいるか分からないがホモが多い校風なのでまだまだいそうである。 時任もしおらしくしていれば実は結構な美少年なのだ。 目つきが悪くて台無しになってるけど顔立ちは整ってるし、綺麗なアーモンド形の目してるし、睫毛は長いし、力あるくせに華奢だし、腰なんかすっげー細い。性格は俺様でキツイけど付き合ってみると人懐っこくて甘えんぼ、笑うと可愛いし、なんかほっとけないタイプなのだ。男女ともに人気がある筈である。 ただ今まで久保田がしっかり張り付いていて他の奴らが近づけなかっただけなのだ。 「要は男とデートする気がないと誰でもわかるようにすりゃいいんだよな」 「まあ、そうすりゃ皆諦めるだろうな」 「・・・いいこと思いついた!」 時任はすっくと立ち上がり「俺様天才っ!!!」と叫びながら何処かへ走り去っていた。 「一体何すんだ?・・・」 何をするにせよどうせ騒ぎになるのは間違いないだろう。 どうなることやら・・・頭が痛い相浦であった。 次へ |
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会計役の相浦くんは体力自慢では無いものの頭脳派で冷静に分析しつつフォローするタイプじゃないかなーなんて希望してます。実は相浦×桂木カップリング推奨派ですv 姉御肌の桂木ちゃんを後からフォローする相浦くんがツボなんです。久保時バカップルのフォロー役としてはぴったりですしね(笑) 2006.12.14 |
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