お気に召すままに2
時任の『クリスマスデートしてやるっ!』宣言の翌日の朝
いつも遅刻すれすれの時任が珍しくも始業時間よりかなり早く学校に来ていた。

「時任おはよー」
「・・・よぉ」
「何その仏頂面、まだ久保田君とケンカしてんの?」

運悪くも同クラスの桂木は時任を見て呆れたように言った。
毎度ながらこいつらのお守りは疲れるのだ。

「久保田君は?」
「知らねー」
「一緒に来なかったの?」
「ムカついたから置いてきてやった」

あらら、これはちょっと久保田君が可哀相かも・・・

「そりゃ腹立つ気持も分かるけど久保田君だってイブに頼まれごとなんか好きでする訳無いじゃない。なんかよっぽど事情があるんじゃないの?」
「久保ちゃんが何を引き受けようがそんなん久保ちゃんの勝手だからどーでもいい」
「んじゃ何でそんな怒ってるのよ」
「・・・黙ってるとこ」
「え?」
「あいつはいっつも勝手に決めて自分の中に閉じ込めて俺には何も言わねー。特に生徒会絡みだとぜってー言わねーのっっ」

怒ってる理由はそっちかぁ、これは結構根が深いかもね
久保田君は時任を巻き込まないようにしてるんだろうけど独り残されるほうはたまんないのよね

「久保田君は時任に心配させないようにしてるんだと思うんだけど・・・」
「分かってる、けど腹立つ。そりゃ手伝えねーかもしんないけど、相方の俺くらいには言ったっていいじゃんか・・・」

不機嫌そうに言いながらも項垂れる時任。

これは・・・怒ってるだけじゃなく、頼りにされてないと思って落ち込んでるのかしら??久保田君は時任限定の心配性なだけでそんな訳無いのにねー・・・
そう思って慰めようとしたら

ガラっ!

「時任?ちょっと話あんだけど・・・」

ドアから他クラスの男の子が時任を呼んでいた。確かバスケ部の子だ。背が高くてちょっとイケメンで女の子から人気があるので覚えがある。でも時任と友達だったかしら?話してるの見たことないけど??」

「んー?」

時任も『こいつ誰?』という顔をして席を立つ。

「話って何だよ」
「いや、ちょっとここじゃあ・・・」
「?いーから話せよ」
「あのさ・・・クリスマスイブに俺と映画行かないか?」
「はぁ?何で?」
「何でって・・・その、イブを一緒に過ごす相手を探してるって聞いたから・・・時任とクリスマスデートしたいなって思って・・・」
「・・・・・」
「どうかな?」

ドカッ!!

「何が悲しゅうてヤローとデートしなきゃなんねーんだっ!!出直してきやがれっ!!!」

バスケ部のA君(仮名)は勇気を持って告白してくれたにもかかわらず無情にも時任によってクラスから蹴り出された。久保田との紛らわしい会話で忘れがちだけれど時任は極ノーマルな嗜好の持ち主なのである(今のところは・笑)

「だーっムカつくっっ」
「(どっちも)ご愁傷様」
「全くだ」
「でもさ昨日の今日でタイミング良すぎない?」
「何が?」
「だからデートのお誘いよ」
「?」
「今まであんまり正面切って時任にデートのお誘いなんか無かったじゃない?(久保田君が睨みをきかせてたから)」
「俺様ほど美少年なら今までが少なすぎだっての!、どっちにしろヤローはごめんだけどな」
「久保田君以外とデートしてやる宣言した次の日にお誘いがあったなんてタイミングが良すぎるわよね。あの会話が誰かに聞かれて広まってるのかしら?」
「たまたまだろ?」
「そうかしら・・・」

ガラッ!

そんな風に話してる最中に再びドアが開きまた他クラスの生徒が顔を出す。今度は見知らぬ人だった。

「時任いる?ちょっと話あんだけど・・・」

そして暫く時任と話した後バスケ部のA君(仮名)と同じ道を辿る羽目になった。

結局朝のHRまでに時任宛の来客が3名、それらがそれぞれバスケ部のA君(仮名)と同じ道を辿った。
しかも皆が「イブを一緒に過ごす相手を探してるって聞いたから」と言う。
昨日の今日だというのにしっかり噂が広まっているようだ。
誰が聞いて広めたのかは知らないがそれだけ執行部の有害コンビが注目されているということなのだろう。

こうなったらひと波乱起こら無い筈がない。

・・・桂木の予感は見事的中していたのである。






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桂木ちゃんは皆のお姉さん役だと思ってます。
いつも手の掛かる時任と久保田に囲まれて大変です。頑張ってねv

2006.12.14
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