トラブルドロップス
一日目 - 1 -

 それぞれが選んだドロップを飲んだ。そして・・・

「・・・何よコレッ!」
「うをッ?」
「OH!すばらしい!!!」
「ほう〜・・・」
「なんなんですかこれ〜〜〜〜!!!」
「何ィッ!!!」
「・・・・へェ・・・・」

 叫び声からすると、それぞれ明暗が別れたようです・・・。

「白って白馬の王子様の白かよ・・・」

 王子様の正体は相浦だった。白いタイツときんきら金の衣装が眩しい立派な王子様になっていた。頭の上には可愛らしい冠までついている。・・・カッコ良いとは言いがたいが中々可愛らしい王子様になっていた。どうやら衣装も一緒に変わるようです。

「憧れの桃太郎!素晴らしいデス!!!」

 松原は額にキリリと鉢巻をし、腰には刀を下げ、桃マークの入った紋付袴を着た立派な桃太郎となっていた。しかも傍らには犬と猿とキジがいる。芸の細かいことである。

「一寸法師じゃなかったがこれもなかなかいいな」

 Sマークの入ったマッチョな全身青タイツ男・・・言うまでもなくスーパーマンだ。もともと背が高くてマッチョな室田が着ると異常に似合っていた。

「室田カッコイイです!」
「そ、そうか?」

 デレデレするスーパーマンと目をキラキラさせる桃太郎・・・東西のヒーローが交流するとこういう感じなのだろうか。不思議な光景である。

 どうやら彼らはまあまあな結果だった。しかし不憫な結果に終わったのが約二名・・・

「・・・こ・こんな姿になるなんて・・・・!!!」

 不憫その1は藤原だった。男子高校生のままである。・・・ただし、かなり、いやものすごく、太めになっていた。はっきり言って超肥満児である。

「・・・5番のW×2ってのは体重(ウェイト)が二倍になるってことなのか」
「黄色と赤の縞々は霜降り肉みたいなイメージだったのかしら」
「ナッティプロ○ェッサーみたいですね」
「一緒に制服まで大きくなるなんて便利だな」
「下手すると服で首が絞まって死んじゃうからじゃない?」

 のん気な感想を述べる面々だった。しかし当事者としてはそうのん気に楽しめる状況ではない。ある種一番なりたくない姿になってしまったのだ。

「そんな皆さんのん気に言うけど、元に戻らなかったらどうしてくれるんですか〜〜〜〜!!」

 切れて泣き叫ぶ藤原・・・しかし太りすぎて誰だかわからない。知らない人のようだ。

「そしたら責任持ってダイエットメニュー作ってあげるから。安心して?」
「そんな・・・久保田先輩・・・」

 彼の脳内ではダイエットメニューを久保田と一緒にこなす映像が流れているが、ダイエットメニューを作るだけで、後は何もしないと思われる。そんな男である。

「・・・にしても、なかなか男前だね、桂木ちゃん」

 もう一人の被害者は・・・桂木ちゃんだった。桂木和美(♀)→桂木和美(♂)になっていたのだった。男子高校生を飲んだらしく、制服もしっかりと学ランに変わっていた。身長は少し高くなったが長めの髪や顔立ちは変わらずそのままシャープに男っぽくなっていた。学ラン姿が凛々しいなかなかの美男子である。・・・非常に不機嫌そうな顔をしているが・・・。

「ホント、美少年ですね」
「今ですら姉御って慕われてるのに新たなファンが出来そうだな・・・」
「違和感ないな。実はホントに男だったんじゃ・・・」

バシィッ!!

「痛ぇッ!!!」

 不埒なことを言った相浦が容赦なくハリセンで叩かれる。男になったぶんハリセンの威力も増したようで、いつも以上の音と切れ味である。

「・・・ねぇ・・・考えたくないんだけど、トイレは男子トイレに行かなきゃだめよね・・・」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」

 沈黙は金なり。深く考えない方が良いこともある。

「久保田は変わってないみたいだな」
「・・・ですね」

 室田と松原の指摘通り、久保田にはなんの変化も見られない。涼しい顔をしていつも通りにタバコを吸っていた。

「このお楽しみってやつがハズレだったのか?」
「それとも+10歳?老けてるから変わらなそうよね」
「もしくはエスパーとか・・・」
「何かかわった感じある?」

 見かけは変わらないがどこかしら違ってるはずである。

「・・・タバコの臭いがいつもよりずっと強く感じる。・・・キツイくらい、臭う」

 だったら止めろよ、と思うがタバコを咥えてない久保田というのも何か違うので皆は黙っていた。

「狼男・・・かな?やけに嗅覚と聴力が発達してる感じだから」
「嗅覚と聴力?」
「うん、ここにいる全員の体臭も嗅ぎ分けられるし、屋上での話し声も聞けるっぽい」
「へぇ・・・警察犬なみだな」
「変身しなければ一般人と見かけ変わらないんですね」
「・・・ある意味本性(ケダモノ)に近づいたってことよね」

 微妙な突っ込みを入れながらも納得する面々だった。

「・・・ねぇ、さっきから時任が見えないんだけど・・・」
「そういや・・・」
「一寸法師になったとか?」

 それぞれ確かめて人心地(?)つくといつも真っ先に自分の変身を自慢しそうな時任がいないのに気付いた。隠れてるのか、それとも見えない何かになってるのか、皆でキョロキョロと見回す。

「いんや、ココ、ココ」

 久保田が自分の背中を指差す。そこにはカーテンがあった。そしてそこには小さな影が映っていた。時任にしてはやけに小さい影なので見落としていた。一体何になったことやら・・・

「こんなとこに隠れてるの?出てきなさいよ」

 桂木ちゃんくんがバッとカーテンをめくると・・・

 そこには10歳くらいの非常に愛らしい子供がこちらを睨んでいた。

 その子供はぶかぶかの学ランを着ていた。(というより羽織っていた)
 そしてその学ランはさっきまで時任が着ていたものである。
 ということは・・・

「見るなっ馬鹿ッ!」

 どう考えても時任である。どうやら−10歳の薬を飲んでしまったようだ。若返る薬なせいか身体だけ小さくなり、服はそのままでぶかぶかになってしまったようだ。

「「「「「か、可愛い〜!!!!」」」」
「うっせー馬鹿ッ!このうつくしー俺様に向かって『可愛い』なんて言うなッ!」

 小さくなってもしっかり時任である。しかしそんな可愛い姿で言われてもちっちも効果無し、かえって可愛さが増すだけである。
 実際、子供の時任は非常に、可愛らしかった。もう、反則のように可愛かった。ほんのり赤く色づいたふっくらとした頬、つんと尖らせたさくらんぼのような唇、サラサラの黒髪、そしてこぼれ落ちそうに大きくキラキラと輝くアーモンドアイ、そんじょそこらの子供モデルが裸足で逃げ出しそうな美少年ぶりである。そこらへんに歩いてたら連れて帰りたいような勢いの可愛らしさである。

「ホント、可愛いねぇ・・・」
「ッ久保ちゃんまでッ!!」
「だってホントに可愛いんだから仕方ないっしょ?」
「・・・・ムカつく・・・」
「ごめんごめん」

 ごめんと言いながらも、久保田はにやにやしながら時任を抱きかかえ、頬ずりしていた。 ・・・今にもお持ち帰りされそうな感じである。

「・・・すごく、危ない気がするわ・・・」
「・・・さすがに10歳以下には何もしないだろ。したら犯罪だぜ?」
「そんなこと躊躇するような久保田くんだと思う?」
「・・・でも時任が本気で嫌がることはしないとは思うけど・・・」

 桂木と相浦がボソボソと相談していた。気苦労の耐えない二人である。

「ちょっと、お二人さん、聞こえてるんだけど・・・」
「「!!!」」
「聴力も何倍にもなってるからねー、ま、安心してよ。さすがにそこまで鬼畜じゃないから」
「そ、そうよね」
「あ、安心した」

 はははは、互いに乾いた笑いを交わす。正直、信じ切れないのは明白だった。

「・・・何が危ないんでしょうか?」
「さ、さあな」

 キョトンとした松原と知らぬ振りをするる室田、・・・人間知らない方がいいこともありますよね。

「なあ松原、どうせなら種子島に行かないか?飛べるからあっというまに行けるぞ」
「OH!ナイスアイディア!行きましょう!!」
「良し!行くか!んじゃ俺達行って来るから」
「また明日デス!」

 意気投合した二人は皆に簡単に挨拶をすると、スーパーマンが桃太郎と犬と猿を抱えあっという間に飛んでいってしまった。

『『逃げたな・・・』』

 桂木、相浦の心の叫びである。

「ま、いつまでもここにいるわけには行かないわよね。久保田くんと相浦くんと藤原は教室に行きなさいよ。私は時任を保健室に連れてって預かっててもらうから」
「ッ!嫌だッ!あんなとこ行かねーッ」
「ここだと誰が来るか分からないじゃない。大塚達に見られるかもしれないのよ?そんな姿見られてもいいの?五十嵐先生のとこなら先生の親戚の子を預かったって言い逃れも出来るしね。・・・それに五十嵐センセ子供好きだからお菓子とかご馳走してくれると思うわよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 さすが桂木ちゃん、見事な飴とムチ作戦です。子供化しているせいかお菓子と聞いてもぞもぞと動いている。かなり心が傾いているようだ。

「俺と一緒にこのまま早退しようと思ってたんだけど・・・」
「ダメよッ!今日の見回り当番は久保田くんじゃない。それに五十嵐先生なら今の時任に合った服をくれるんじゃないかしら。このかっこのまま帰ったら風邪ひいちゃうわ。それに半分裸の時任なんか連れて歩いたら危ないオジサンにしか見えないでしょッ!即捕まるわッ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 老けている自覚のある久保田はちょっと言い返せなかった。狼男化してるので警察を振り切ることも簡単に出来るだろうが叔父が刑事なので後々面倒そうなのは確かである。

「じゃ決まりねッほら行った行った!」
「んじゃコレ脱いで行くか、時任、学ラン借りてくぞー」
「仕方ない・・・か」
「僕はここに残ります・・・」

 王子様だった相浦はキンキラの上着を時任の学ランに着替えて出て行った。久保田もしぶしぶといった体で一緒に出て行く。

「・・・やれやれだわよ・・・」

 気苦労の耐えない女帝王子様?であった・・・。





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藤原ごめん〜!!!
桂木ちゃん素敵〜〜!!!
ミニ時任は・・・ものっそ趣味丸出しです!イラスト書きたい〜vv
あと2話くらい続きます。


2007.6.11(修正)

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