最後の日 -08- 

「お疲れさま!あとは気楽に楽しんでって♪」
 ドリー卿とのご対面が終わればもうお役ご免だ。
 途中色んな人に声をかけられるナルとは別行動をとって、私はまどかさんに連れられて、美味しいものを食べたり、お酒を飲んだりした。
 今回のパーティは定期的な会合みたいなものであまり堅苦しくないらしい。おかげでパーティ初心者の私でも十分楽しむことが出来た。

 ふらふら見回っていると、ある部屋で人が集まっているのが見えた。
「あの部屋は何ですか?」
「カジノよ。日本には無いわよね。行ってみましょうか?」
「はいッ」
 まどかさんについて行って入った場所は小ホールだった。そこにはビリヤード台のようなテーブルが三つと、半円のような形の台がいくつもあった。続きの部屋にはスロットマシンもあるようだ。
「ここはパーティの余興だけど、ヨーロッパの主要な都市には大抵カジノがあるのよ」
 紳士淑女の皆さんが談笑しながら賭け事をしている。まるで映画のような光景だった。
「あっちの半円がカードテーブルで、長いのがルーレット台よ。ポーカーとかブラックジャックわかる?」
 知ってるけれどプレイ出来るほど詳しくはなくて首をぷるぷると振る。
「じゃあルーレット行きましょうか。あれなら初心者でもできるから」
 まどかさんは余り混んでない台に行き、お金を出してチップを交換した。
「ルーレットのルールはとても簡単。あの回転する円盤に球を投げ入れて、落ちる場所を当てるゲームよ」
 長方形の台には大きな円盤のルーレットが設置されていた。円盤には0~36までの数字で仕切られ、0の部分以外は赤黒で色分けされていた。
「赤か黒か、奇数が偶数かに賭ければ当たった時は二倍の配当、4個賭けの場合は9倍、一点賭けは36倍、的中難易度が高いほど配当が高いの。0に賭けた時だけはその場にあったコイン総取りよ」
「はぁ…」
 テーブルには白い字で0~36番の数字と、赤黒ゾーン、表が書かれていた。ここにチップを置くことよって賭けに参加するらしい。
 目の前では次々とチップが置かれ、ディーラーが長い棒でそれを捌いていく。
「見てるより実践よ!チップ上げるからやってみなさい」
 まどかさんにチップを渡されて、一緒になって恐る恐ると参加する。一点賭けとかは敷居が高いので、赤のゾーンにチップを置いてみた。まどかさんは黒だ。
 少し待つと、ディーラーがテーブルの上を手でかざした。もう置いてはいけませんの合図らしい。少し待つと、回っていたルーレットが止まり、白い玉は黒く区切られた枠に収まった。
「やったわ!黒よ!」
 まどかさんは当たり、私は見事に外れてしまった。ビギナーズラックは無いようだ。
「私こういうの苦手なんですよ。カードゲームもほとんど当たった試しがないですもん」
 サイミッシンング、緊張下で選択を強いられると常に外れを引く特異体質なんて言われてるくらいだ。
「あら、そんなことないわよ。要はやり方よ。麻衣ちゃんは常に反対を選ぶんでしょ?だったらそのまた反対に賭ければいいのよ。次は赤と黒、どっちを選びたい?」
 言われて台を見つめる。ふっと浮かんだのは赤だ。
「赤です」
「だったら黒に賭けてみなさい」
「あ、はい…」
 試しに黒に賭けてみた。
 そしたら…当たってしまった!
「わわわ、当たっちゃいました!」
「その調子よ!どんどん賭けてみましょ!」
「はい!」
 まどかさんに教えてもらった賭けかたはとても有効で、私は立て続けに当てることが出来た。
(お、面白いかも…)
 すっかりルーレットの楽しさに味を占めてしまった。




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2011.10.23発行「彼と彼女の関係Ⅱ」より一部削除して掲載
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