7年後 ヒトデナシのひとり言

「時任〜開けてー」
「久保ちゃんお帰り!」
「ただいま〜」
「あのさ、さっき翔太が来てたんだぜ!覚えてるよな!隣に住んでた小学生」
「うん、知ってる。さっき帰り際に会った」
「そっか、あいつでっかくなってたなー。久保ちゃんとほとんど変わらないんじゃないか?」
「そだね」
「いーよなー、まだ伸びてるんだって。俺なんかぜんっぜん伸びないのにさー」
「二十歳過ぎてて何言うんだか・・・、てかさ時任、そのかっこのまま翔太と会ってたの?」
「?なんか変か?」

本日の時任のカッコはGパンにタンクトップ、ずっと家にいたので朝起きたまんまの格好だった。

「・・・コレ、見えてる」
「げっ!」

久保田が指差したのは時任の首筋。首の付け根にばっちりキスマークが付いていた。

「・・・翔太に見られたかな?」
「んなカッコして見えてないはずないっしょ」
「うー・・・翔太どう思ったかな・・・」
「あー、気付いてたみたいだよ?俺たちのこと」
「げっマジかよっ!」
「うん、『時任兄ちゃんを泣かすなよ』って釘さされた」
「・・・あー、俺あいつにお前のこと愚痴ったからな」
「どんなこと?」
「喧嘩の原因とか」
「なるほどね(痴話ゲンカの愚痴を聞かせられればそりゃ察するよね)」
「別に隠すつもりは無かったけど・・・こんなバレ方は恥ずい。うううーこんなとこに痕つける久保ちゃんのせいだぞっいつも付けんなって言ってんのにさ」
「ちゃんと服着てれば見えない位置なんだけどね」
「うるせー」
「・・・にしてもさあ、俺の留守中に男上げんの止めてって言ってるでしょ。しかもそんなカッコで。百歩譲って翔太なら仕方ないにしても・・・ちょっとお仕置きが必要かな?」
「っっべ、別に変なカッコじゃねーじゃん!前みたいに上なんも着てないわけじゃねーし!」
「そのタンクトップゆるいから乳首見えるし?十分エロいよ?言い訳はあっち(寝室)で聞こうか〜」
「〜〜〜っエロ親父っ!」
「そうそう、もう20代後半だもん。親父だよねー、じゃエロ親父らしく遠慮なく・・・」
「飯まだなのに〜〜〜っ!!」

何を言っても柳に風とばかりに受け流し、久保田は寝室に時任を連れこんで首筋に口づけながらタンクトップの中に手を入れる。

「やっ・・・」
『んーいい反応♪』

調子に乗ったエロ親父はGパンのベルトも外してますます手を動かす。もうこうなったらどう言っても久保田は止まらない。時任も諦めて体の力を抜いてされるがままになる。でもふと気になってたことを思い出し、これだけは言っておこうと久保田を睨みつける。

「おい、久保ちゃん。翔太になんかしたら承知しないかんな」
「?」
「コンビニの兄ちゃんとかバイト先の兄ちゃんに何かしたの知ってるんだからな」
「あ、気付いてたんだ(ちょーっと脅させてもらっただけだけどね?)」
「気付くわい!いー加減長い付き合いなんだし久保ちゃんの行動パターンは読める。だから言ってんだよっ!翔太を殴るとは思わねーけど、居留守使うとか、伝言伝えないとか、そういうのも一切禁止な!」
「・・・信用無いねえ(排除するつもりは無いけどちょっとくらいは邪魔したいなあ)」
「今までのてめーの行いのせいだっつーの!守らないと・・・」
「守らないと?」
「実家に帰る!」
「・・・実家ってどこよ」
「葛西のおっちゃんとこか滝さんとこ」※ちなみに滝さんは結婚してる設定です
「滝さんのトコはともかく、葛西さんとこはどっちかというと俺の実家じゃない?」
「いーのっ! 少しは禁欲生活しやがれっ」
「はいはい」
「・・・翔太は俺が初めて出来た友達なんだよ。変な勘ぐりして邪魔すんなよな?」
「(それが妬けるんだけどね・・)分かった」
「わかりゃいい・・・」
「んじゃ頂きます」
「頂かれてやらあ」

二人でニッと笑いながら口づけを交わしてベッドに沈む。その気になった時任は自分から服を脱いで久保田に抱きつきキスをする。

「・・・なあ、最初に好きになったのは久保ちゃんだかんな・・・」
「分かってる、出来れば最初で最後にしてね?」
「ふん、見捨てられないよう頑張りやがれ」
「りょーかいです」
「ばっそういう意味じゃ・・・やっ・・・」
「えー、こっちも大事よ?」
「・・はっ・・・エロ親父・・・」
「うるさいお口はふさいじゃいましょ」

んーとキスをしてからその後は会話にならないまま夜が更けていく。
その後数時間、エロ親父はちょっと(?)の嫉妬がはいってるぶん良いお仕事をしたそうな。可哀想な時任は夕飯も食べれずにそのまま爆睡、さぞかし明日がうるさいことでしょう。それでも絶倫なエロ親父は事後にタバコを一服するくらいの余裕はありました。

『時任を泣かしたら許さない』・・ねえ。まあ翔太なら時任の色気にトチくるうことは無いだろうから警戒する必要はない。どっちかというと弟猫を守る兄猫とか子猫を守る母猫っぽい感じだ。でも変な欲がないぶん怒らしたら厄介そう。それは葛西や滝にも言えた。

「お前ってば色んな人に愛されちゃってるね・・・」

時任を見やって一人ごちる。
本音を言えば時任が自分以外に関心を払うのも、自分以外の者が時任を大事に思うことも両方とも嫌だった。もっと言えばその目に自分以外が映るのも嫌だった。
出来るなら時任を閉じ込めて自分しか見ないようにしたい。
誰にも邪魔されず、死が二人を分かつまで、世界でたった二人だけでいられればと思う。
実際に実行してしまおうと思ったことが何回もある。
でも周りはそれを許さないだろう。
そして時任は周りをを大事にしているので排除することも出来ない。

「実行できなくも無いけど、そうしたらお前はもう今みたいに笑わなくなるだろうね・・」

時任の笑った顔が好きだった。怒ったり笑ったりする顔を見ていると胸が騒いで、生きていると実感できる。その顔が見れなくなるのは嫌だった。

「ま、仕方ないよね」

このヒトデナシはたった一つの願いを、たった一つの大事なモノのために今日も諦める。

多分一生叶うことはないのだろう

残念に思いながらも、少しだけ安堵しながら今日も大事なモノを抱えて眠りにつく

とりあえず、朝まで二人きりなのを満足しながら・・・





(終)




 
久保ちゃんはすっげー独占欲が強いと思います。しかも人殺しを躊躇わないヒトデナシです。こんな怖い恋人は時任だからやってけるんだと思います。でもそんなヒトデナシでもひっそり幸せになって欲しいなあと思いつつ書いたせいか、なんだか幸せムードSSになりました。私にしちゃ珍しい。つーかエロ風味は初ですね。

2006.11.24
  >> NOVEL TOP >>