犬と猫 | ||
うりゃっ!」 ガチャガチャガチャッ バウンッジャジャンッ!! 深夜のリビングにゲーム音とコントローラーの操作音そして時任の掛け声がが鳴り響く。時任が今ハマっているのは今週発売された某格闘ゲームシリーズの最新作だ。買ってからずっとやりこんでいて今日も昼からずっとやり続けかれこれ10時間経っていた。新しくゲームを買うと3日位はこの状態が続くのが常だ。 ・・・もうそろそろ飽きてくるかな? 『無念・・・!』テレビ画面から無情な音声が流れた 「だ〜〜っ!!またやられた!!!」 コントローラーを投げ出してクッションを抱えながらソファに倒れこむ。 「あ〜〜っもう止め!」 暫くう〜う〜唸っていると飽きたのかチラチラととこちらを見始めた。 暇になったので構って欲しいのだろう。 でもそれに気づかない振りをして黙々と新聞を読んでる振りをする。 「久保ちゃん、それ何か面白いこと書いてあんのか?」 ほら我慢できなくて自分から話し掛けてきた。 唇をとんがらせてちょっと拗ね気味だ。 「んー、そうだねぇ最近は殺伐とした内容が多いけど、あ、これなんか面白い」 「何?」 「コラムの記事、今日8/19は断髪令が出て侍のちょんまげを禁止された日なんだって。ちょんまげって戦国時代に入ったとき、兜で蒸れるから髻(もとどり=後ろ髪を高く結い上げる)を兜の下に敷いて隙間を作るために曲げて頭に乗せたんだって。さらにその下を剃って月代(さかやき)ができてあーいう形になったらしい。あの形にも意味があったんだねぇ」 「へ〜・・・意味あったんだな」 「うん、禿を隠すためだったと思ってた」 「あー確かに!丁度禿げる場所だよな!」 「だよねぇ」 とりあえずは他愛の無い話しで笑いあい退屈を紛らわせる。 でもそれだけじゃ足りないだろう、さて何をご所望だろう? 「もうゲーム飽きちゃったの?」 「・・・同じとこばっかでやられっからつまんねー」 「どこ?見せて?」 テーブルの上に新聞を置いてソファの時任の隣に座る。 ゲームを起動してセーブしてあるとこをやり直してみる。 あー、このステージか、たしかにやりにくい。 「こういう時はさー、こことここ押しながら防げばいいのよ。あとはタイミングだぁね」 「それが簡単にできりゃ苦労はねーっての!」 「ほら、もう一回やってみ?」 「うー」 ピコピコ、ジャジャンッ! 「あっ出来た!」 「だしょ?」 「へっへ〜〜んだ!見てろ〜〜っ!!」 難関ステージをクリア出来たとたんゲームに集中し始めて、またもやこちらは置いてきぼり。 自分がおもちゃに夢中な時はこっちなんか見向きもしない かといって飽きたらこっちに構ってくれ光線を出してじゃれかかる 気まぐれで、自分勝手で、でも構わないと拗ねてしまう寂しがりや ・・・ホント、猫みたい(笑) まっく可愛くてしょうがない * * * * * バウンッジャジャンッ!! 『無念・・・!』 「だ〜〜っ!!!やられたっ!!」 久保ちゃんにコツを教えてもらって次のステージに行ったけどまたひっかかり始めた。 「う〜〜っ今日はここら辺で止めとくか・・・」 時計を見ると夜の3時を過ぎていた。 「もう寝るか」 テレビとゲームの電源を切って寝室に向かう。 久保ちゃんは俺がゲームしている間しばらく傍にいたけど2時ごろ「おやすみ〜」と言ってたので先に寝ているはずだ。心持ち静かに寝室のドアを開けてベッドに入る。 「・・・時任?」 薄目を開けて久保ちゃんがこっちを見る。 眠りが浅いのかどんな時間でも俺が後からベッドに入ると必ず目を覚ます。 そして無意識にか俺の方に腕を伸ばし俺を確認すると俺を抱えるようにしてまた眠りにつく。 すると今度は深い眠りに入るらしくなかなか目が覚めない。 最初は寒いからと言ってたけどもう夏じゃん くっついて寝る必要ないんだよな・・・ 寝室はエアコンが丁度良く効いていて寒くも暑くも無く快適な温度だった。 もちろん人間あんかなど必要はないのだ。 ただひっつきたいだけとしか思えない。 久保ちゃんは俺のことをよく猫みてーと言うけど久保ちゃんこそ犬みてーだ 意味も無く飼い主に引っ付きたがるし 俺が構いはじめるまで傍にいて様子を伺い辛抱強く”待て”をする 何よりたまにじーっとこちらを見てる時が犬みたいだ 犬が飼い主をひたむきに見つめるように、全てを委ねるかのような目をする時があるのだ そんなときどういう顔をすればいいのかスッゲー困る 久保ちゃんはどうしたいのだろう? 俺が何をすれば満足するんだ? ・・・口で言やいいのに言いやしない、だから困るのだ。 俺が先にベッドで寝ていたり、ソファーで寝こけてる時に久保ちゃんの気配で目を覚ますことがある。そういうときは久保ちゃんは俺の傍で何か言いたげに立ち尽くしてることが結構ある。『久保ちゃん?何?』って言っても『何でもない』『風邪引くよ』とか言うだけで理由とか何も言わない。寝たふりしてそのままにしてると猫みたいに頭や顔を撫でたり、俺を寝室に運んだりする。そして最後に必ずタメ息をするのだ。 何か言いてーのなら言やいいのに ひっつきたいくらいだから嫌われてる筈ではないので余計にタメ息の理由が分からない。 「・・・まあいっか」 久保田の暖かい手で撫でられるのは気持がいいので嫌じゃない。 タメ息は気になるけど本当に何か言いたくなったら言うだろうからそれまで放って置けばいいか それ以上考えるのを止めて眠りにつく さて、猫に犬の想いがバレルのは何時でしょう? まあ遠い先じゃないのは確かそうです それまでは、ゆっくりお休みなさい・・・ (終) |
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久保ちゃんのみ時任のこと好きなって行くのではアンバランスなので、時任視点も書いて二人の気持ちがバランス取れるようにしていきたいと思ったのです。元ネタはうちのワンコの視線です。犬ってほんと一途で、じーっとこちらを見るときがあってどうすればいいのか困るときがあります。構ってもらえるまでじーっと待ったりするときとか切なそうに見送る時がねー・・・。犬はじーっと我慢の子、猫は気まぐれ、っていうイメージがありますが実際はどうだろう??犬しか飼ったことないのでちょい適当です。 「時任君!身の危険を感じたから目が覚めたんだよ!本能だからね!逃げな!」と呟きながら書いてました(馬鹿) 2007.1.23 |
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