ぬくもり

まだあたりが暗い中、久保田はふと久目が覚めた。

「・・・・・・・・・」

時計を見るとAM 4:30、外は雨が降っているらしい。
かすかな水の音と雨のにおいがする。
雨の音を聞いてると頭がさえて眠気が消えていく。起きるには早いがそのままベッドにいる気にはなれなくて、かといって何かしたいわけではなく、なんとなくベッドを出て、コーヒーでも飲んで一服しようかとキッチンへ行く。

リビングに入るとソファには毛布にくるまった時任が寝ていた。
どうやらまたゲームをしたまま寝てしまったらしい。テレビの前にコントローラーとソフトが散乱していた。

スー・・・、スー・・・
規則正しい寝息がリビングに響き、それに合わせて胸がかすかに上下している。
今にもゴロゴロのどを鳴らしそうだ。

『気持ちよさそうに眠ってるよねえ・・・』

なんとなく手を伸ばしてその頭をなでる。サラサラと癖のない髪はとても気持ちいい。頬をなでるとくすぐったそうに首をすくめる。

『ホント、猫みたい』

自然と口もとがゆるんでしまう。
ことんと頭をのせてみる。
あたたかなぬくもりと規則正しい寝息に、去っていた眠気が戻ってくる。
欲しい物は煙草でもコーヒーでもなかったようだ。

『アニマルセラピーってやつかねー』

毛布ごとゆっくり時任を抱き上げて寝室に入る。そおっとベッドに時任を降ろしたがさすがに気付いたようだ。時任は寝ぼけながらも目を開き久保田を見る。

「・・・うぁ?くぼちゃん?、あれ?ここベッド・・・」
「んー、寒いからね・・・」

ごそごそと時任を抱き寄せる。ぼんやりしつつ、されるがままにする時任。

「ほら俺って冷え性だし?あったかい方がよく眠れるんだよね、一緒に寝よ?」
「・・あぁ、まいいけど・・・」

呟いてそのまま体を弓なりに曲げ久保田に寄り添うようにして寝てしまう。初めて会った時と同じの自然とやる仕草。恐らく以前から他人と寝る事があったのだろう。逆に眠れなくなりそうなことを考えながらも、腕の中のあたたかな体温とおだやかな寝息につられて自然とまぶたが重くなる。
過去はどうでも今はこのぬくもりはここにあるのだ。


『あー・・よく眠れそ・・』


もう雨の音は聞こえなかった。


   *
   *
   *
   *
   *


「えぇっ!なんで俺ここにいんの!!」

時任の叫び声で目が覚めた。熟睡してたのになー。

「・・・おぼえてないの?(意味深に)」
「・・・俺なんかしたか?」
「んー、何だろね?」
「・・・なんだよ、言えよ」
「まあいいじゃない。あったかくて気持ちいいんだよね。もちょっと寝よ?」
「ヤロー二人でシングルベットって・・・ありえねえ」
「・・・おやすみー・・・」
「ってもう寝てるよ、早っ・・・」

時任は再び毛布にくるまった。

「ま、いっか・・」


しばらくすると寝室に二人分の寝息がひびく

あたたかくなるまでもうすこし・・・













(終)
 
なんでもない2月のとある日の情景
時任をそういう目で見てないときの久保田はキンシップ多くて本人無自覚にベタベタ触ってそうな気がするんですよね。そんで「寒いからー」とかの理由で平気で一緒のベッドとかで寝てんじゃないかな。でも恋人未満の状態で欲情したときは一歩距離を置きそうな気がするんですがどうでしょう?恋人になったとたん更にべたべたしてそうですがね(笑)
最近寒いのでうちのワンコと寝たいと思ったのが元ネタです。毛皮に埋もれるの好きなんす。

2006.11.1
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