初コンビニ | ||
もうそろそろ外に連れ出してもいいかな? 俺の腕がぽっきり折れて暫くした頃、セッタが無くなりそうになった。 時任にいろいろな家事を手伝ってもらってるけどお買い物はまだ頼んだことがなかったし、いい機会だから一緒に行っておつかいも出来るようになってもらおかね。 「時任ー、買い物に行くけど一緒に来る?」 体は平気みたいだけど追っかけられてたみたいだから外への恐怖心とかあるかな? 時任は暫く逡巡した後にこっくりと頷いた。 「・・・・・・・行く」 まだ外は寒いので時任に俺のジャンパーを着せて、手には俺の皮手袋を付けさせて外へ出る。身長差があるのでかなり大きい、だぶついてて動きにくそう。今度時任の服もいくつか買った方が良さそうだ。 「この手袋はくぼちゃんのか?」 「うん、俺のが手大きいから爪長くても平気っしょ?」 「おう」 なんだか嬉しそうに手を開いたり閉じたりしてニッカリと笑う。 こんな笑顔久しぶりかもね。俺の骨折ってから落ち込んでたからなあ。 「くぼちゃん何買うんだ?」 「セッタ1カートン、あと適当に欲しいもの」 「わかった」 「荷物持ちよろしくー」 「へいへい」 並んで歩きながら近所のセブンに向かう。時任はキョロキョロしながら物珍しそうにあたりを見回しながら歩いている。連れ出して正解だったみたい。 歩いて10分ほどで目的地へ到着、こんだけ近ければ翔太と一緒なら時任でも来れるだろう。 「いらっしゃいませ〜」 店内に入って時任に買い物かごを持たせる。 「何か食べたい物とかある?」 「んー特に無い」 「んじゃ、俺は新商品を・・・」 ポイ、ポイと買い物かごに放り込む。 「げっ甘いものばっかじゃん。太るぞ」 「だーいじょーぶ、(ヤクザさんとかに追っかけられて)よく運動してるから。でもお前はもちょっと太ったほうがいいんでない?これとか食べてみる?」 「んー、じゃあとこれとこれ」 俺がすすめたチョコバーとポテチとせんべいをかごに放り込む。あと弁当をいくつかみつくろう。そしてレジに行って会計をしようとしたらおでんが目に付いた。湯気がほかほかしてて見るからにあったかそう。今日も寒いからなあ。 「おでんも食べてみる?何がいい?」 「くぼちゃんは?」 「俺は白滝と大根と卵とはんぺん」 「んじゃ俺も同じの」 「んじゃ2つずつお願いね」 「あ!あとこれ、穴の開いたやつ」 「ちくわぶも追加ね」 最後にタバコを頼んで会計をすませる。時任が何も言わずに手を出して荷物を持ってくれた。 「ありがとうございました〜」 買い物袋ぶらさげて並んで歩く。時任が買い物袋の中を物珍しそうに覗いてる。猫が匂いを嗅いでるみたいでちょっと笑える。 「もしかしてコンビニ行くの初めて?」 「かもしんねーけど分かんね。でもコレは見たことがある気がする」 「ポテチ?」 「そ!この黄色いの見たことある気がすんだよなー」 「ふーん、じゃおでんは?」 「このちくわぶっての見たこと無い気いする」 「ふーん・・」 「くぼちゃん早く帰ろうぜ!ちくわぶ食べたい!」 「はいはい」 早足になってマンションへ向かう。そんなに急ぐとこぼれるよ?(笑) 「なあ、これってくぼちゃんの名前か?」 時任が指差したの”久保田”と書かれたうちの表札。 出たり入ったりしてるけど意識不明の状態がほとんどだから初めて見たんだあね。 「そ、久保田誠人(くぼたまこと)っていうの」 「ふーん、こんな字書くんだ」 しげしげ表札を見た後こっちを見てニッカリ笑う。 嬉しそうなその顔はやけに幼く見える。イタズラっ子の表情だ。 「久保ちゃん!」 「なに?」 「呼んでみただけ」 「何よそれ」 「なんとなく呼びたかっただけ。おでん食べよーぜ」 「うん」 リビングの机にさっさと荷物を置いておでんを取り出し、嬉々としてちくわぶにかぶり付く。気に入ったらしく次々と平らげてく。 「?久保ちゃん食わねーの?」 「手出していいの?」 「何だよそれ」 「いや、全部食べたそうで気が引けて」 「・・・そんな食い意地はってねーぞ」 「というより餌付けしてる気分?」 「何だよそれっ!」 「まあまあ、ほら俺の分の卵も食べていいから」 「・・・はんぺんのがいい」 「はいはい」 「サンキュ!なあ久保ちゃんまたコンビニ行こうな!」 「・・・うん」 お前は”また”って言うけれど一体いつまでお前はここにいるんだろうか? いつ記憶が戻って元の場所に戻るかも分からない こうして過ごした時間も忘れてしまうかもしれない それでも、もう一回ぐらいはこうしておでんが食べれるかな? 多分、ね・・・ (終) |
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言い訳 5巻では「くぼちゃん」と「久保ちゃん」と両方使われますが表札で漢字覚えたのかな?なんて妄想したのが元ネタです。時任ってなんか食べさせたくなる顔をしてると思うのは私だけだろうか?自分じゃ出来ないので久保ちゃんに餌付けしてもらいました。 2006.11.28 |
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