じゃじゃ馬 おまけの後日談 | ||
「今日も・・・したいなぁ」 「やだっ!昨日もしたじゃんっ!ぜってー嫌だ!」 「俺は毎日でもいーんだけどねぇ」 「冗談じゃねぇ!せいぜい1週間に1回だっっ!」 「えー、せめて週3回にしようよ」 「ぜってーヤダっ!そんなんしたら体がもたねぇっっ!週1回だ!!」 「んじゃ譲りに譲って週2回、これ以上減らされたら欲求不満になっちゃって1回がすっごくたくさんになるよ?」 「・・・それはヤダ」 「でしょ?だから、2回にしよ?」 「・・・仕方ねぇ、それで我慢してやる」 「ありがとね?」 ・・・一体、何の話だ? 執行部の片隅で、久保田と時任がまるで夜の営みの回数について議論する夫婦のような会話をしていた。いつもの紛らわしい会話っぽいが、つい2週間前に二人がくっついたのを知ってる俺はいつもの紛らわしい会話かそれともホントに怪しい会話なのかどうか悩んでしまう。 「さっきからなんなんですかっ!!!一体なんの回数なんですか!!!」 藤原が叫んだ。 「あぁ?何おまえ興奮してんだよ」 「ごはんのメニューのことなんだけどね」 ごはんのメニュー? 「久保ちゃんてばほっとくと毎日カレーなんだぜっ!信じらんねぇよっ!!」 「だって作るの簡単だし、おいしいしねぇ」 「それでもせいぜい週1か2だろーがっ!そんな毎日毎日カレーばっか食えねーよっ」 「うーん、俺は平気なんだけど」 「俺もカレーは好きだけど限度ってもんがあるだろーがっ!飽きるっての!」 「飽きるとお前食べてくんなくなるしね・・・、仕方ないから別のにしようか」 「ヤリィッ!んじゃキムチチャーハンっ!」 「はいはい」 どうやら決着がついたらしい、いつもの会話通りに脱力してしまう いや、ほんとに怪しい会話だったら困るのだが・・・ 「あーもう二人は帰っていいわよ、痴話喧嘩やるなら家で帰ってからやって頂戴っ」 「誰が痴話喧嘩だっ!俺様の切実な訴えだってのっ!」 「まぁまぁ、んじゃお言葉に甘えて帰ろうか、キムチ切れたから買い物行かないとね」 「へーい」 「んじゃね」 「じゃな」 お騒がせなバカップルは仲良く帰っていった。 「・・・ったく、くっついてもくっつかなくても紛らわしいのね、あの二人は」 「そうですね」 「全くだ」 「あ?、お前らも知ってたんだ」 皆気付いたのか?それともどっちかから聞いたのか?何気に二人が出来上がったことを前提に話してるのにびっくりした。 「二人のこと?そりゃ気付くわよ、女の洞察力をなめないでよね」 「久保田はあんまり顔には出さないけど、なんとなくな」 「付き合い長いですしね」 「なるほどな・・・」 今更と言えば今更過ぎるので執行部の面々は二人がくっついたことに全く動じていないようだ。どちらかというと『やっとくっついてくれた』という気分なのだろうか。 たった一人の例外を除いては・・・ 「・・・くっつくって・・・あの二人のことですかぁ・・・?」 地の這うような声で藤原が呟いた。 こいつは全然気付いてなかったらしい。 「あんた全然気付いてなかったの?久保田君のどこ見てんのよ」 藤原に対して呆れたように桂木が言った。 「ここ最近の久保田くんてば始終上機嫌だし、前以上に時任にベタベタしてるじゃない。時任も久保田君にベタベタされるのなんて当たり前だったのに、最近じゃ照れたり困ったりした顔もしてるじゃない。今まで当たり前なことに別な意味合いが含まれたからでしょ?これで気付かないなんてどうかしてるわ」 「うぅ・・・・」 「そんなことにも気付かないんじゃあんたの出る幕はないわよ、諦めなさい」 ビシッと人差し指を突きつけて藤原に向かって言い放つ。 キツイなぁ・・・ちょっと藤原に同情する。 「・・・時任先輩なんて、我がままで、俺様で、乱暴で、野蛮なのに・・・僕なら久保田先輩に尽くすし、ずっと美形で上品なのに・・・」 「仕方ないでしょ、久保田君はそんな時任が良いって思ってるんだから」 「・・・・・・・・・」 「久保田君は上品で従順で可愛いお姫様には興味ないの、野蛮で乱暴で俺様なじゃじゃ馬の時任が好きなのよ」 「・・・僕は認めませんっ!認めませんからね〜〜っ!!」 そう言って泣きながら部室を出て行った。 ちょっとかわいそうな気もするが、これが現実だ。久保田のことは早々に諦めた方が無難である。どうやっても藤原に勝ち目は無いのだから。 「藤原もさっさと自分に合った白馬の王子様かお姫様タイプを見つければいいのにね」 「まぁなぁ・・・どうやったって久保田とあいつじゃ合わないよな」 藤原は久保田に自分の理想の王子様像を見てる節がある。でもどう見たって久保田は王子様ってタイプじゃぁないので藤原の目が曇ってるとしか思えない。恋は盲目というやつなのだろう。 「でも自分に合うか合わないかで恋するわけじゃありませんから」 「そうなのよね・・・」 「こればっかりは仕方ないよな」 「言えてる・・・」 松原の言葉につい頷いてしまう。確かに、自分に合う、合わないで恋が出来るほど俺達も器用じゃない。本当は藤原のことを笑えないのだ。 「にしても・・・、ねぇ相浦くん、二人のこと何か知ってるの?」 「え?」 「藤原にはあー言ったけどホントは二人がくっついたことの確信は無かったのよ。多分くっついたんじゃないかなって思ってた程度なの。でも相浦くんは『お前らも知ってたんだ』って言ったわよね。確実に二人はくっついたって知ってたってことでしょ?」 「あ・・・いや・・・」 「だったら二人の間で何があったか知ってるわよね?そうでしょ?」 「えと・・・」 「教えてくれるわよね?」 桂木がにっこりと笑って『さっさと白状しなさい』と脅してくる。さっき藤原にキツイことを言ったときより数倍怖い笑顔だった・・・ ごめん、時任・・・ こうして、心の中で時任に謝った後、あらいざらいしゃべってしまう相浦だった・・・ * * * * * 「あーうまかった、ごちそうさんっ」 「どういたしまして、カレーじゃないと良く食べるよね、お前」 「だっていい加減限界だったかんな、それよか、くーぼちゃんっ、対戦ゲームしね?」 「いーよー、んじゃ後片付け賭けてやろうか」 「げっ、んじゃパス」 「ダメー、もう決定、やろ?」 「んじゃ俺の得意なやつなっ」 「そんぐらいは認めましょ?(笑)」 食べ終わった夕食の皿をそのままに、テレビの前に行って最近やり込んでいる戦国物ゲームを取り出しセットする。これは久保ちゃんはほとんどやってないので何とかいい勝負に持ち込めるだろう。 「用意できたぜっ」 「時任は誰使う?」 「前田まつ」 「じゃ利家にしようかな」 「尻にしかれてる旦那の代表だぜ?」 「それはどうかな?」 お互いふふんと睨み合う 勝負スタート! そして3分後・・・ 「あり得ねぇっ!!!」 「はい、後片付けはお前に決定ね」 「何でLV60がLV45に負けんだよっっ!!!」 「お前ってばガードするのが下手なんだもん」 「だぁぁぁぁぁっムカつく〜〜〜っ!!!」 頭を抱えてソファに倒れこむ。 必殺技が強烈で気に入ってるので地道にレベル上げをして育てていた自信のあるキャラだったのだ。それだけに負けたのはショックだ。レベル差が15もあって負けるということは久保ちゃんと俺の腕の差がそんだけあるということでもある。ムカつくが完敗だった。 「・・・仕方ねぇ、片付けすっか」 「別のことに付き合ってくれたら俺がしてもいいけどね?」 何をだ?と思って顔を上げるとすぐ傍に久保ちゃんの顔があった。そしてそのまま近づいてくる・・・ 「ん・・・」 久保ちゃんとの距離がゼロになり、それどころか舌を差し込まれ侵入される。ざらついた舌で口内をなぞられ、舌を絡ませるとゾクリと背筋に悪寒が走る。これが気持ちいいのだとわかるようになったのはつい最近だ。深いキスの合間に息をすることもやっと憶えた。2週間前こういう関係になってから数え切れないくらいキスをしたせいだ。あれから久保ちゃんはことあるごとにキスを仕掛けるし、すぐ、触りたがる。そして、毎日のように、したがる。・・・ちょっとやりすぎじゃねーかと思うくらいだ・・・ 「んぁっ…」 俺の上にのしかかってきた久保ちゃんがシャツの中に手をいれ胸の突起を弄くりだしてきた。男もこんなとこで感じるなんて初めて久保ちゃんに教えられた。毎日のようにするせいで敏感になった気ぃする。ちょっと触られただけで変な声が出ちまう。 「くぼちゃん・・・っ」 久保ちゃんはいつも、長く深いキスをし続けながら俺の身体を触りだす。まだ慣れない俺はあっという間に息があがりそのまま流されてしまう。『もっとゲームしたい』と抗議しようとしても、イロイロされてしまう内に息が上がって何も言えなくなっちまう。今だってそうだ。着ていたTシャツはいつのまにか首までたくし上げられ今度は舌で胸の突起をなめられた。もう片方の突起も左手でこねくり回されどうしようもなくぞくぞくする。 「・・やっ・・・」 「時任は乳首が弱いよね」 「しゃべ・・んなっ」 久保ちゃんが恥ずかしいこと言いながらザラついた舌で胸をなめるたびに、腰に熱が溜まり頭が沸騰し始める。そうすると、もうされるがままで抵抗できない。こういうことが嫌な訳じゃねぇけど、こう毎日だとちょっとキツイ。久保ちゃんも気ぃ使ってくれてるのかいつもいつも挿れるわけじゃあない。お互い触って達して終わることも多い。けど昨日は挿れなかったし、明日は休みだから多分今日は挿れたがるだろうな・・・休み前だから手加減しそうにねぇし・・・明日は一日ベッドから出られないこと確実だ。徹夜でやり込みたいゲームもあったんだけどなぁ。けどそんなこと言おうとしてもちゃんとした言葉にならない。 「くぼちゃんっそこやっ・・」 「はいはい、もっと触って欲しいんだよね」 「バカ、ちがっ・・・ん」 くぼちゃんがGパンのチャックを下ろして侵入してきた。直に握りこまれてまた体温が更に上がる。なんも考えられなくなってきた・・・。 「とーきと、息つめないで声だしてよ」 「バ・・・カっ」 久保ちゃんがエロ親父みたいなことを言いながら手を動かす。何でお前はそう余裕なんだよっ!こっちはイッパイイッパイだってのっ!けど口を開こうものなら恥ずかしい声が出ちまいそうで何も言えねぇ、ムカつくっ!そう思いつつ声を殺して黙ってされるがままにしていたら、なんか気持ちいいとは別の感覚が襲ってきた。 ん? あり・・・? なんか、ヒリヒリする・・・ 気持ちいいというより、痛ぇ・・・ 「くぼちゃ・・ん、なんか痛ぇ・・・」 「あ、ごめん、力入れすぎちゃった?」 「ちが・・・ちょっと手ぇ離せってば・・・」 「すぐ気持ち良くしてあげるから」 ブチッ 「手ぇ離せっつってんだろっ!!!」 ドゲシッ!! 久保ちゃんがエロ親父みたいなことを言いながら全然止めようとはしてくれないので、腹が立ったから思いっきり下から蹴り上げてやった。みぞおちにモロ膝をいれてやったのでさすがの久保ちゃんもゴホゴホ言ってる。けど同情の余地無し!イテーのはこっちだっての! 「時任・・・ちょっと酷くない?」 「テメーが手ぇ離さないからだろっ!こっちはお前に触られたとこがヒリヒリして痛ぇんだよっ」 「ヒリヒリして痛い?」 「そう!なんかさっきからピリピリする」 久保ちゃんは首を傾げながらちょっと考えた後、今まで俺を握りこんでた手の指先をペロリと舐めた。・・・なんか見てるこっちが恥ずかしい。 「夕飯のキムチのせいみたい」 「は?キムチ?」 「キムチとかを長く触ってると唐辛子の辛味成分が手にうつるんだね。だから粘膜が薄くて敏感なとこは唐辛子が触れたようにピリピリしたんじゃない?ほら、舐めてみ」 そう言って、久保ちゃんは俺の口元に人差し指をかざした。なんか恥ずいけど、ペロリ、と舐めてみる。・・・確かに辛子みたいにピリッと舌先に刺激が走った。 「ホントだ・・・辛子みてー」 「ごめんね?これじゃ痛いはずだわ」 「おう、自分の握ってみろよ、イテーぞ」 「遠慮いたします。こんなこともあるんだねー…、でも、手を使わなきゃいいことだよね」 そう言って久保ちゃんは再び俺にのしかかろうとしてきた。 フザケンナッ! 「まだ痛ぇーっての!今日はもうダメっ!」 「大丈夫、手で触んないから」 「イーヤーダーっつの!絶対触んないって無理に決まってんだろっ、こっちの身になってみろっ!んな無茶言うともうしねーぞっ!!」 「・・・それは嫌」 「今日はお終いっ!」 「・・・せっかく明日休みなのに・・」 「んじゃゲームしようぜ、ゲーム!久々に朝まで耐久勝負っ!」 「・・・はぁ・・・仕方ないか・・・」 久保ちゃんは渋々俺から身体を離し、ゲームコントローラーを受け取った。諦めてくれたらしい。ホッとする。 「んじゃさっきのもっかいしようぜ」 「いーよー、じゃ今度は俺がおまつさんにしようかな」 「んじゃ俺が利家な」 「尻にしいてあげよう」 「男の威厳見せちゃる」 さっきまでのエロい雰囲気はなかったことのように、ゲームをし始める俺達。 俺達は恋人でもあるけど、友達で、相方でもある。 だから、恋人達の濃密な時間も嫌じゃないけど、こういう友達同士の時間も俺的には大事な訳で・・・ 今までは久保ちゃんに流されてばっかだったけど、俺としちゃもっとあっさりしていきたいから時には今日みたいに拒否してこういう時間をもっと増やそう。でないとどこまでも調子に乗ってエロ親父に走りやがるかんな、久保ちゃんはっ!そう決意を新たにする。 『物慣れない時任が流されてくれるうちにもっとイロイロしてエロく調教したい』 と思ってる久保田くん 『ほっとくと好き勝手して調子に乗るかんなっ、躾しなおしてやるっ』 と決意し、”イケナイ”と”オアズケ”を憶えた時任くん 新しい関係が始まったばかりのお二人です。 戸惑うことも多いでしょうが、じゃじゃ馬とそのじゃじゃ馬に惚れた者、お互いに馴らし合うのもそれなりに楽しそうです。 お幸せに〜 終わっとけ |
||
・・・あははは、下品っつーかなんつーか、いろいろごめんなさい。いやー犬を飼ってる以上は”イケナイ”ぐらいは仕込まないとと思いまして、はい。めでたくくっついたお二人ですが、久保田は浮かれて毎夜毎夜しかけるだろうなー、でも時任はそんなに濃いーのは勘弁だろーなー、でも慣れてなくていつも流されそうだし、女と違って上手く拒否できる口実ないよなーって考えたら小道具のキムチを思い出しました。人間版アップルビター?ってやつです。キムチ触った手で目を触ったりしても痛いです。こうして”イケナイ”のスキルを憶えてやられっぱなしじゃない時任くんになってもらいました。やっぱり対等じゃないと嫌なのよね、このお二人は。 タイトルの”じゃじゃ馬”ですが、気付いた方もいると思いますが某イギリスの偉大な脚本家の有名な喜劇の”じゃじゃ馬馴らし”からきてます。(お気に召すままも実はそう・・・これは偶然でしたけど) 手の付けられないじゃじゃ馬を大量の持参金をつけるからと言われて婚約した男が従順な奥様になるよう仕込んでいく喜劇です。とんでもない話に聞こえますが、社会のルールや彼女の行いが他人にどう見えるか身を持って教え込んでいくので結構大変でそれなりに奥さんへの愛がなくちゃやれないのです。アクの強い男にはあれくらいのじゃじゃ馬のがお似合いだと思う。だからじゃじゃ馬もホントの性格はじゃじゃ馬のまんまで、でも旦那への愛が芽生えたから表面の行動だけでも従順になるようにしただけじゃないかな。ホントはお互いがお互いを馴らし合ったように思えるのです。割れ鍋に閉じふた夫婦の出来上がり?って思うとなかなか笑えます。そんなわけで、二人がくっつく話を書こうとしたら、割れ鍋に閉じ蓋バカップルの出来上がり=じゃじゃ馬馴らし、と連想してしまいタイトルが決まりました。シェ○クスピアさんごめんなさい。 実は『じゃじゃ馬』は『お気に召すまま』の続きとして書いてました。そしてこの後のネタも題名も決まってるのでシリーズ名をつけることにしました。ズバリ喜劇シリーズ。そのまんまです(苦笑) 2007.3.28 |
||
>> 妄想文 INDEX >> |