アクサル公演『WILD ADAPTER』 観劇れぽ


久保時くまと舞台チケット

はじめに
今回は峰倉氏が関与してないということで原作とは全く別物として観るつもりで臨みました。
原作者が関わってないというならそれは二次創作のようなものです。どんなに深く原作を読み込み解釈してもそれを自分が表現するとなると自分の伝えたいことが加味されるのでどうしても原作とは違った方向に行きがちになります。同人誌だってそうじゃないですか。どんなに深く解釈している人でもその通りに表現する人は少ない。公式で認められた舞台化だとしてもご本人が関わらないなら期待はできないなと思ってました。だから今回も別の作品だと思って観ることにしました。
そしてその結果、作品としても未熟でとても残念な出来だったなと感じました。ですから、これから書く内容はアクサルファンの方や役者が好きな方にはちょっと辛い内容になるかもしれません。それでも構わないという方のみご覧下さい。


4月5日
18:30 開場

新宿のシアターアップルへMさんと入場。着席。不安と期待でドキドキしながら開演を待つ。そこで春にお会いしたSさんと再会。ちょこっとだけですがお話できて嬉しかったですv
チラシを見る。とても原作に近いイメージで上手に作られてる。でも本当の衣装とは全く違うのでこれは詐欺だなと話しあう。そうこう話してるうちに開演。


19:00 開演
幕があいたら床の上で布をかぶった人たちが揺らめく。照明キレイだし、音楽もキレイだ。何か話しながら布が上がる。・・・この布に赤いマンとらしきペイントが・・・しかも顔部分に穴が空いてるよ。丁度9人分だしこりゃ最後被って顔出すな。そして後に本当にそうなる。

登場人物の姿がハッキリと見えてきた。すごいビジュアル系です。好きな人は好きだろうなと思うがアダプターじゃないね。ここら辺は事前に教えてくださった方がいたので心の準備は出来てました。

声は生じゃなくてマイクでした。私はマイク音声が嫌いだ。舞台役者は腹筋鍛えてなんぼだと思う。このクラスの大きさだとつけるのが普通らしいが近くにつけすぎてないか?少しは生声が届くはずなのにまったく届かないよ。入り方が変で違和感感じるのよ。臨場感が伝わんないのよ。作り物っぽいのよ。もう少し上手くつけて欲しい。

あと舞台装置が後ろの幕とパイプ椅子のみって・・・。もう少し考えようよ。せっかくビジュアル系な衣装にしたんだからもう少し拘って欲しい。せめて後ろの布もっと増やすとか、バレバレなのは止めて欲しいよ。椅子ももちょっとビジュアル系なの使うとか。後でアクサルファンの方に聞いたらこのクラスの大きな劇場はあまり使ったことがないらしい。だからかな。空間を使いきれてない気がしました。

話が進むが1巻からストーリー通りに進むわけではなく時間軸を越えて混ざって時に同じエピソードを繰り返しながら進む。正直よくわからん。初っ端から葛西さんが撃たれたのはちょいと腹立ったな。なんか若手お笑いのパフォーマンスをしたらしいが私は知らんので楽しめなかった。

原作の中のいろんなセリフを引用してるが今ひとつ使いきれてない。セリフを言う人間を入れ替えるのはナシだろう・・・。翔太が要らない子って誰も言ってないじゃん。それ久保田の子供の頃と重ねてるんだろうが頷けないな・・・。使うならそれを飲み込んだとこを表現して欲しかった。小宮には「生きて」といわないと原作知らない人には伝わらないだろうがも少し途切れさせて欲しかったな。

逆に楽しめたのは創作セリフ。後半のも混ざってます。
 真田「(久保田相手に)私と牌を交えてみないかね」
 葛西「俺は誠人の育ての親だ」
 葛西「(沙織に向かって)探してる最中なんだよ」
 新木「(亡くなった沙織の恋人に対して)羨ましいことに恋人と同棲中なんだそうです」
 新木「(男が演じた教祖に向かって)うわー・・・こういうごつい女性好きだな〜」等
笑いをこらえるのに必死でした。すげぇ笑える。真田さんお誘いしたことあるかな?あっても「う〜ん、後々面倒そうだからヤメときます」とか言って振られてそう。葛西さんが聞いたら「こんな捻くれたガキもった憶えはねぇッ!」って言いそうだよな!葛西さん役の人好きだな。あと関谷役が時任の腕を執拗に撫でさすってて「セクハラだ!」と叫びたくなった。

こんな感じで前半終了。


20:00 休憩
お隣のMさんが「びっくりした。ぽかーんとしちゃった・・・」と言ったので「うん、実際に口ぽかーんと開けてたよ」と教えてあげました(笑)。腰痛くなってきたのでちょっと準備体操。あと一時間はつらいかも。腰も精神的にも。お腹すいたしさ。


20:15 後半開始
進み方は前半と一緒。かわらずカオス状態。ちゃんと憶える気を失くす。

時任がお姫様抱っこされるが久保田にじゃない別の人。嫌がってるのが可愛いが結局久保田には抱っこされない。おいおい媚びた演出するなら最後まで媚びてくれ。

アクションシーンとかちょっと多めかな。アクションシーンは上手だと思う。音の入りとかキレとかちゃんとタイミングあってたし。この調子で荒磯やってくれたら面白かっただろうな・・・。まあそこは置いといて。久保田が叫んでるのは笑えるな。逆に叫んでるとこ見てみたいよ。時任が弱い子で表現されてるのは何故だろう。久保田視点だからか?久保田を強調したかったからか?ほんとは時任に縋ってる久保田を時任で表現したいのか?イマイチよくわからん。

やっぱり後ろの幕が下りてきて中から人が顔を出す。はいはい・・・。

最後は5巻の名セリフのとこ。そして赤い羽根が降る。スポットが当たって全体が明るくなる。これはキレイだな。そして終演。


感想、考察
今回の舞台はメインが久保田です。久保田誠人という男の視点で展開されてるようでした。
いろんな人と出会って分かれて、いろんな事件が起きて終わって、それは全て彼の中に蓄積されている。でも彼の視覚には全ての事件が並列してあるんじゃないだろうか。どれもこれも同じ程度の重さで混ざってる。時間系列も重さも全てあいまいでぼんやり通り過ぎていったように感じてる。でも蓄積されてる。ふとしたことで思い出したり忘れたりする。整理されてない記憶の渦の中でぼんやり薄目を開けている。しかも眼鏡してない状態で。久保田とはそういう精神状態の男なんじゃないだろうか。時任と出会うまでは。時任と出会ったあとは時任を通して世界を見てるような気がする。

話はずれるが私の古い友人に付き合った男全て覚えているがどの順番で付き合ったか憶えてないという人がいる。それだけ彼女の中は時間系列があいまいで混沌としてるらしい。だからどういうふうに自分が形成されたかよくわかってない。時間かけて勉強してだんだん把握できるようになったらしい。最初はそんな馬鹿なことってあるのかと思ったが、話を聞いてそういう人がいるんだと知った。因みにそいつの彼氏の一人は彼女のことを記憶から削除した。意識的に記憶喪失したらしい。彼女が一番好き勝手した相手で一番彼女のことを分ってくれた相手らしい。彼女のことをリアルアキラさんと密かに思ってる。漫画のようなことが実際あるんだよ。今は落ち着いて一児の母だけどね。いつか久保田も落ち着くといいな。それをふと思い出して久保田もこれに近いんじゃないかなと思った。

今回の舞台はそういう混沌さを表現したかったんじゃないかな。同じ役者で何役もこなすのも、時間軸が混ざってるのも、全て久保田の中から見た世界だから。久保田の中では誰もそんな違いがない。最初みんなが銃で撃たれて死んでるのも久保田はそれくらい大事なものがないから。小宮が何回も死んでるのもそれだけ思い出す機会が多いから。雨が降ったたんびにふと思い出す瞬間があるのかもしれない。それだけ小宮は特別だったと思う。あんま自覚なさそうだけど。最後に時任の手をとって赤い羽根が落ちてスポットが世界を明るく照らすのも久保田の目が開いたというのを表現したいのかな。ここは違いそうだけどそういうことにしとこう。時任が弱い子なのも久保田が弱いからかな。ここは疑問だ。役者の解釈の違いだろうか。原作を知ってる私はこう解釈したが知らない人にはどう見えたのだろうか。わけわからんで終わるんじゃないだろうか。実際のとこ何を表現したかったかは疑問です。

こういう表現方法をするならもう少し舞台設定を整えてもっと幻想的にしたほうがいい。あんな大舞台じゃ衣裳のみ浮かび上がってる。もう少し小さい劇場で行えばもう少しなんとかなったんじゃないだろうか。そうすれば生声で臨場感も伝わるしね。

何より思ったのは、題名に『WILD ADAPTER』の名前をそのまま使うべきじゃない。例えば『その男、久保田誠人-WILD ADAPTER-』とかアレンジすべきだった。それくらいメインは久保田で原作で大事にされてる二人のつながりを表現してない。原作名そのまま使うから原作ファンは期待するし、原作知らない人はこういう内容なのかと勘違いする。この舞台のせいでWILDADAPTERって面白くないと思われるたらちょっと許せない。でもこれをきっかけに読んで好きだと思った人もいると思う。そう思うと全く許せないわけじゃないのが微妙なとこだ。

色々な意味で残念で未熟な作品だったと思います。

でも今回のことでまたmemeさんと再会できたし、その後のオフ飲み会ができたので(これがまた楽しかったのなんの…詳細は日記にて)良い機会をもらったなと思ってます。そういう意味では感謝してます。終わりよければ全てよし、な気分ですね(笑)



2008.4.10







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