☆ 男同士の内緒話 ☆

前回で佳主馬くんが佐久間くんとこに泊ったときのお話です。
健二さん出ませんのでご注意ください。


「ふぅん、ホントに佐久間さんて巨乳好きなんだ・・・」
「おいおい、人のお宝見といて感想がソレかい」

 風呂から上がって部屋に戻ったら、俺の部屋に転がり込んでいたキングが勝手にベッド下のお宝18禁AV雑誌を取り出しペラペラめくっていた。人の部屋を勝手に漁るんじゃないとか、16歳が見るもんじゃないとか、言うべきことはいくつもあったが一番気になるのは興味無さそうに見てるその態度だ。

「何でそんなつまんなそーに見てるわけ?男なら好きだろ、普通」

 キングが手にしている本は選りすぐりの美女を集めセットや衣装に背景にいたるまでこだわり抜かれて作られた非常にクオリティの高い一品だ。清純タイプから熟女まで幅が広いので必ず好みの一人がいる。しかもみんなFカップ以上の美乳のナイスバディだ。もうちょっと顔を赤らめて前屈みしながら見るのが正しい作法だ。
 大体枯れきった大人や特殊な趣味でも無い限り、男なら大きな胸の裸のお姉さんが好きだとDNAに刻み込まれているものだ。そんな無関心な様子で眺めるなんておかしくないか?
 それなのにキングは首を振って「全然」と答えやがった。
 なんと不健全な!イイ大人になれませんよ!!
 冷蔵庫からビールを取り出しながら、いかにその本が素晴しいかとくと聞かせてやろうと思ったが、ふと怖い想像が頭をよぎる。

「…まさか、キングって女に興味ない、ひと?」

 なんせ男として出会った健二に惚れたんだ。有り得ない話じゃない。
 それなら乳に興味なくても仕方ない。
 大丈夫、もしそうだとしても俺は変な目では見ないぜ☆

 ボコンッ!

「イテッ」

 キングは無言で丸めた雑誌ではたいてきた。こらこら、人のお宝本を粗末に扱うんじゃない。しかも目がマジだ。冗談に決まってるだろー?

「健二さん以外に興味ないだけ。男はキライ」
「だよなー!冗談だって、そんな怒るなよ。ほらビールやるから」
「俺未成年なんだけど」
「一本くらい平気だろ?健二には内緒にしといてやっから」
「それはこっちのセリフ。未成年に酒すすめたって聞いたら怒るよ。健二さんそういうの厳しいから」
「んじゃお互い様ってことで」

 カチンと鳴らして軽く乾杯する。
 キングは慣れた仕草でプルタブを開けごきゅごきゅと飲みはじめた。おお、堂に入った飲みっぷり、やっぱり飲めるんじゃん。陣内家の面々に鍛えられてんだろうな。これで無愛想小僧のキングも酒が入れば少しは口が軽くなるかもしれない。いい機会だからいろいろ聞き出したいところだ。

「で何で怒ったわけ?」
「冗談にならないから」
「へ?」
「女子からの告白全部断ってたり、女子に興味ないって言ってたら勘違いする奴がいるんだ、それも結構な数で」
「あー、女子はそういうの好きだからなー」
「女子だけならまだマシ」
「は?てぇことは、もしかして男も?」

 キングは頷き溜息をついて「うんざり」って顔をした。
 うわーマジですか・・・

「俺が女に興味ないって噂がたったら『実は前から好きだったんだ』なんて血迷った奴らが出てきてホント洒落にならないから」
「へ、へぇ・・」

 まぁこんなイケメンに育っちまったから女ばかりじゃなくその手の男に目を付けられてもおかしくはない。そっちの世界は未知の世界だが男女ともにイケメンがモテルのは同じなのだろう。

「でも今は健二とつきあってんだからそんな噂消えただろ」
「噂されることは減ったけど状況はあまり変わらない」
「へ?彼女いるって内緒にしてるとか?」

 確か中学の終わり頃から付き合い始めた二人だ。昨日今日の付き合いじゃない。内緒にしてなければキングに彼女が出来たと広まるとともにその不名誉な噂も挑戦者も減るはずだ。

「まさか、告白されたら『彼女がいるから』って断ってる。でも未だに告られる」
「玉砕覚悟ってやつかね。もしくはあわよくば横取りできるかもって思ってるとか」
「『彼女がいる』ってのは女(男)避けのウソって思われてるみたい」
「あーなるほど・・・」

 キングが唯一興味ある健二は遠く離れた東京にいる。月3回は会ってるようだがそれ以外は彼女ナシの生活だ。彼女がいれば当然休日にデートしてたり、手作り弁当や放課後一緒に歩いてるところを目撃されるはずだ。それが全く無く女の影が無ければ彼女がいるなんてウソだと疑われても仕方ない。

「文化祭にでも健二呼んで彼女いますってアピールしてみたら?あいつだって学生服のキング見たいって言ってたし」
「え?そうなの?」
「おう、『どんな高校生活してるのか見てみたい』って言ってたぜ」
「ふ、ふうん」

 どうやら初耳のようで、キングは少しばかり照れ臭そうな、でも困ったような表情を見せた。
 健二は自分が4歳も年上なことに引け目を感じてるしキングもまた然りだ。学制服姿なんてそれをまざまざと見せつけるようなモノだ。だから言いにくかったのかもしれない。

「でも、駄目」
「何で?」
「そこまでするほど困ってないし、健二さんに心配も迷惑もかけたくない」
「そうか?彼氏の女(+男・笑)避けのためとなれば迷惑とは思わないだろ」

 健二はキングと歩いてると女から睨まれることがあるらしい。キングはそれを心配してるのだろうか。でもあいつはそれくらいじゃへこたれないしそうでないとこれから先もやってけない。それだけ健二を健二を大事にしてるのかもしれないが妙な遠慮のように思える。

「あ、それとも女の子に囲まれたキングなんか見せて健二が焼き餅やくの心配してる?」

 滅多に怒らないぶん怒らせたら怖いからなー。それなら納得。
 でもキングは首をかしげている。

「・・・焼き餅?健二さんが?」
「へ?彼氏が自分以外の女に囲まれてたら普通焼くだろ」
「・・・想像出来ない」

 おーおー、不思議そうな顔しちゃって。キングは常に追っかける側だったからなー、今までそういう状況になったことがないのでだろう。
 あいつはあいつで年上の見栄でそういう姿は見せないようにしてるのかもしれない。
 健二は一度懐に入れたモノにたいしては案外独占欲が強い。あっさりと手放しそうでその実しっかり抱え込み放さないタイプだ。しかも土壇場では気が強い。キングを巡っての修羅場が起きたら絶対健二が勝つ。キングに守ってもらうまでもないと思うけどな。

「俺相手に焼いてばっかいないでたまには健二に焼き餅やかせてみたら?」
「・・・嫌なこと言うね」
「『焼き餅焼かれるとちょっと困るけどちょっと嬉しいんだよね』」
「?」
「これ健二が言ってた言葉」
「・・・・・・・」
「たまには逆の立場になってお互いの気持ちを味わうのもいいんじゃないか?」

 この案が実現すればキングもちょっとは安心して焼き餅やきが改善されるといいんだが。
 余裕のないキングは見てて楽しかったが目の敵にされるのもいい加減飽きた(酷)。
 そろそろ落ち着いてくれて、こうして健二をつまみに飲める機会が増えたら楽しいんだけどな。
 
「・・・考えとく」

 キングは思案するように軽く頷いた。


 * * *


「ところで話は戻すけど」
「ん?」
「何で巨乳に興味ないんだ?」
「・・・・」

 うろんげな目をしてキングに睨まれてしまった。
 睨むなよ、ホモじゃないのは分かったからさ〜

「何でそんなこだわるのさ」
「いやーこんな美女のグラビアを前にして平然としてりゃ不思議になるって」
「好みじゃないだけだよ」
「そこがわかんないんだよ。好みじゃなくてもキレイだなー、イイなー、お願いしたいなー、って思うだろ。男なら」
「確かに美人だとは思うけど、それ以上でも以下でもない」

 うーむ思わないのか・・・草食系の俺でも興奮する一品なんだがな。
 キングの興味対象は見事に健二のみだ。なんでそんなに健二一筋でいられるのか?
 健二といえば貧乳。健二みたいな貧乳なら反応するのか?

「貧乳フェチのキングには向かない本だったか・・・」
「貧乳フェチって何さ。人を変態みたいに言わないでくれる?」
「違うのか?」

 貧乳フェチなら男のふりのためにサラシ巻いててまったいらにした胸も気にせず健二に惚れ、出来上がった後もその貧乳に不満も見せず、それどころか大きくしなくていいとまで言い切るのも納得できる。それならFカップ以上のお姉さん方のグラビアを見ても無反応なのも頷ける。

「・・・多分、最初に見たのが健二さんだからだよ」
「どゆこと?」
「健二さんが初めて陣内家にきた夜・・・」


 * * *


 夜、母さんに『佳主馬お風呂はいってないでしょ。そろそろ小磯くんもでるだろうからお前も入っちゃいなさい』と言われて風呂場に向かった。

 脱衣所に入ると風呂場のドアの隙間から湯気が漏れ人影が見えた。母さんが言ってた『小磯くん』とやらはまだ出てないようだ。お客さんなのだから遠慮した方がいいのかもしれないが出直すのは面倒だ。そう歳の変わらない男同士なんだから一緒に入って問題はないだろう。
 そう思いドアの向こうの『小磯くん』に一緒に入っていいかと聞こうとしたら、ふと脱衣所に置かれた籠に入ってる衣服が目に入った。当然『小磯くん』のものだと思われるが少しおかしい。何故ならカゴの中には男物の服と女物っぽい下着が混ざっていたからだ。他にもサラシみたいな布切れもあった。

 サラシは怪我でもしてないと使わない。でも納戸で会った時はこんなの使ってる様子はなかった。
 どうも変だ。風呂場にいるのは本当に『小磯くん』か?それとも全然別の誰かか??
 親戚の誰かが入ってるのかもしれないし、誰か知らない女性のお客さんが入ってるかもしれない。
 それとも自分の考え過ぎで女物っぽく見えるが実は男物なのかもしれない。

 どうしようかと考えていたら、再びドアのすき間からチラリと人影が見えた。
 背が高かったからやっぱり『小磯くん』だろう。
 そう思って隙間から風呂場を覗くと湯煙の向こうに納戸で見た『小磯くん』が見えた。

 でも

 上気してほんのり色づいた白い体
 華奢な体にほっそりとした手足
 頼りなげな首筋
 濡れた髪から項を伝って落ちるしずく
 その先には小さいながらも女性を象徴する乳房があった。

 どこからどう見ても”女の人”だった。

 産まれて初めて見る家族以外の女性の体。
 丸みが少なく親戚の誰とも違ってあまり女を感じさせない。
 かといって同級生の女子ほど子供っぽくはない。
 少年と少女の中間のような中性的でつるりとした体だった。

 僕がもっと性的に成熟していれば物足りないと感じた体かもしれない。

 でも

 のどが渇き、ごくりと喉が鳴った。

 体が熱くなりいいようない衝動が体を駆け巡る。

 顔も体も熱くて暑くてしかたない。

 僕はその熱から逃れるようにその場から走って逃げだした。
 
 女の人だった!女の人だった!
 『小磯くん』て夏希姉ちゃんの彼氏でしょ?
 だったら男の人でしょ!
 じゃああれは誰?どういうこと!?

 混乱しつつ、先ほど見た光景が頭をチラつきその夜はろくに寝られなかった。


  * * *


「ほーほー、そんなことがあったとはねぇ」
「何そのニヤニヤ顔、キモイよ佐久間さん」
「こんなん聞いてにやにやせずにいられるかいっ、で?」
「で?って何さ」
「どこまで見ちゃった?」
「・・・ほぼ全部」

 キングは当時を思い出したのかちょっと顔を赤らめた。
 うーわーそんな初々しい表情見せられたらもっと聞きたくなるっしょ!

「あーもしかして勃っちゃった?」

 ボスッ また雑誌で頭をはたかれた!

「何聞いてんのさ!眼鏡オヤジ!」
「いやー13歳だったらそうなっても可笑しくないっしょ」
「うるさいっ」

 この様子じゃ図星だな。
 しかもこの過剰反応、もしかして初勃起だったりして・・・ありえない話じゃない。
 でもそんなこと聞こうものなら今度は鉄拳が飛んできそうだ。

「じゃーそれから健二を意識しはじめちゃったとか?」
「きっかけなのは確か。でもその後の騒動ですっかり忘れてたから意識しはじめたのはずっと後」
「しばらくは大変だったもんなー・・・」

 3年前のあの大事件後は後始末が大変だった。
 あんだけOZ内を好き勝手したのだからその後のメンテナンスが大変で大変で・・・何日間も泊り込んで作業した覚えがある。今はもうイイ思い出だ。

「イロイロあっていつの間にか健二さんのこと好きになって」
「もしかして初恋?」
「まあね」

 ふーん、初恋の相手と成就する相手ってホントにいるんだな。羨ましいこって。

「それまで全然女の子になんか興味なかったけど急にそっち方面が気になりだして」
「随分遅咲きだなー」
「その後は普通だけど?」

 うっわムカつくやつ!どうせ俺は大学デビューだよ!

「で、男にとって一番クルのって好きな相手だよね」
「まあな」

 女と違って男は好きと性欲がほぼ直結している。それ以外の相手でも直結しやすいのだ。好きな相手なら尚更だ。

「だから思春期の妄想アレコレの相手って全て健二さんでしてた」
「それは俺も覚えがある」

 中学の頃はずっと好きだった隣のクラスのKさんをよくオカズにしたもんだ。

「実物見てるから想像しやすかったし」
「どんなグラビアの美女よりも目の前の生のが印象深いもんなー」
「だから健二さん以外でイッタことないんだよね」

 へ?、今何て言った??

「健二さん以外をオカズにしたことないし、ホントのHも健二さん以外とはしたことない。僕の相手は最初っからずっと健二さんなわけ」
「・・・・・・」
「そのせいか健二さん以外は反応しないみたい」

 ・・・何か今すごいこと聞いちゃったんだけど・・・。
 つーことは何か?
 どんなに凄い美女のお誘いでも健二でなけりゃ無反応ってか?健二専用だといいたいのか?
 どんだけ健二好きなんだよ・・・。
 
「キングが貧乳フェチじゃないのはよーーーっくわかった」
「当然でしょ」

 いや、それ以上に適切な言葉があっただけだ。

「キングはフェチはフェチでも、【健二フェチ】なんだな」

 ずっと一途だと思ってたがそのレベルは超えている。
 ここまで来たらフェチだろ、フェチ!

 キングはその指摘を否定もせずニヤリと笑った。

「ハジメての相手は特別。当たり前でしょ?」

 いや、違うからソレッ!
 なのに思いっきり当然て顔して言いやがった!全然悪びれてないし!

 ・・・なんかもう疲れた。
 やっぱキングは半端じゃない。
 凡人には理解できない境地にいる。
 やっぱさすがだわキングさん・・・。

 こんな規格外は相手する方が大変だよなぁ。
 今更ながらに親友のことが心配になってきた。頑張れよな、健二。

 冷蔵庫から二本目のビールをを取り出し、溜息とともに苦さを飲み込んだ。





END




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佳主馬の初めては全て健二さんに捧げるがいい。初恋も初キスも初体験も初○○も全て健二さんのものであればいい。健二さんは奪われたようで奪ったのさ!・・・と妄想したら覗きシーンが出来あがりました。佳主馬くん痛い子になってごめんね・・・。
オマケでこれにいれなかったどうでもいい文があります。

2009.12.11
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