久保時生誕祭2008 投稿作品


[31] 時任誕生日おめでとう!!(9/10文追加)  
■犬´  投稿日:2008/09/11 (Thu) 00:49  *3回修正  
  Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.0.04506; Tablet PC 2.0)
IMG_000031.jpg  ( 210 KB / 640 x 480 pixels ) by Upload
「俺ってさ、ホントは誕生日わかんねーんだ」

 誕生日パーティが終わり、ふたりでぶらぶら歩く帰り道、ふと時任が言い出した。
 突然の暴露話だがパーティ中の会話につながってるのだとすぐ気付いた。
 

 * * * * *


「そういえば、9月8日って聖母マリア様の誕生日でもありますね」

 帰国子女の松原はキリスト関連の行事に参加したことがあるのだろう、思い出したように言いだしたのだ。

「あら、それじゃ時任ってばマリア様と同じ誕生日なわけ?」
「へぇ、縁起のイイ日なんだな」
「キリスト教なんだから縁起とは言わないだろ」
「たしかにな(笑)」

 俺的には『ふ〜ん、マリア様、ね。処女の代名詞だけど、もう処女じゃないよねぇ』なんて言ったら殴られること確実な感想を抱いていた。
 それに対し時任ば…

「…ふふん、この美しい俺様にぴったりな日だろ?」

 さも当然そうに胸を張って言いきった。

 でも、答えるまで一拍の間があった。

 その時の表情が、苦笑いのような、でもすっきりしたような、そんな笑顔だったので
 誕生日に何かあるんだろうけど心配することもないのだろう

 そう 思った。

 * * * * *


「そう、じゃどうして今日が誕生日になったの?」
「施設じゃ誕生日がわらかない子供はみんな9月8日にしてたんだよ」

 ”施設”

 時任には家族がいない。施設で育ったと聞いていた。子供の頃の記憶がないとも聞いていたが誕生日も知らなかったとはね。身元がわからない捨て子ってことだろうか。時任の手のことを考えれば有り得る話だ。

「キリスト教系の施設だったわけ?」
「おう、破戒僧牧師がやってたからな」
「・・・破壊僧はないでしょ、牧師さんなんだから」
「酒飲む、博打する、暴力ふるうわで、ぜーんぜん聖職者っぽくねーんだよ」
「ふ〜ん・・・でもいい人だったんだ」
「おう、すっげーいい人だった」

 過去形。もう亡くなったのだろう。時任が施設をでた経緯はわからないがその人の死が関係しているのかもしれない。

「その人が決めたんだ俺達の誕生日」
「そう」
「なあ、何で皆一緒で9月8日だと思う?」
「・・・大人の事情?」

 『それぞれ設定するのが面倒だから』、『忘れずにすむから』、『一緒にお祝いすればいいので安上がり』、その他モロモロの大人の事情を真っ先に思いついた。

「そう思うよな。けど違う。最初に皆説明されんだ。『ちょっとマリア様から借りました』って」
「借りた?」
「『お前達の誕生日はわらない。けど人生長く生きてると思いがけないこともあるしねぇ。いずれ分る日がくるかもしれない。それまではマリア様の誕生日をお前達の誕生日を借りとこう』っだってさ」
「・・・ふうん、何でマリア様?他にも聖人はいるでしょ」
「『借りるなら綺麗なおねぇさんのがいいでしょ?』なんだと・笑」

 …ただのノリで決めたんじゃないだろうか(疑)

「その日は皆でケーキ食ったり歌ったりでそれなりに楽しく過ごしたんだけど、やっぱ自分の誕生日って感じはあんましなかったな」
「みんなが一緒じゃあね、仕方ない」
「まあな、誕生日っつーより一年無事に生きられたってカウントする日みてーに思ってた」
「……」

 生をカウントする日、まあ正しいのだが子供が思うことではない、普通は。

「今思えばさ、誕生日でも何でも自分のものが一つ欲しかったんだ」

 誰しもが持ってて当たり前の誕生日、それすら無い、そう思ったのだろうか

「でもさ今日皆で話してたら、あいつらにとっちゃ9月8日は俺の誕生日なんだよな。マリア様ってのは後付なのな」
「キリスト教徒じゃないからね」
「だよな。・・・そう思ったらなんかさ、今日は俺の誕生日なんだなって」
「・・・?」
「あいつらが、久保ちゃんが祝ってくれるんなら、借り物のこの誕生日も、ホンモンかなーって、さ・・・」
「・・・」
「9月8日は俺の誕生日、俺のモンだ、そう思えたんだ」
「…良かったね」
「おう」

 時任はニッカリと笑った。

 参ったな、なんて男前に笑うの、お前。
 言葉にできないなにかが胸に湧き上がる。

「・・・そういえば、ココにもあるよねぇ、お前のもの」
「あぁ?」
「ほら、ココ」

 ぶりっ子風に首をかしげ自分の胸に両手をあて、にんまりと意味ありげに笑い、胸の何かを誤魔化すようにおどけて言ってみた。
 
 俺を見た時任はちょっと頬を染めたが、すぐにんまりと笑って

「ああ、ココにもあったな」

 と、言いきった。・・・久保ちゃん完敗です(笑)

「・・・帰ろうか」
「おう」
 

 俺達は 時任の 二人の 家へ帰った。


 何も持たない子供

 誕生日も 名前も 記憶すらも

 何も 持ってなかった子供


 今日は誕生日を

 友人の祝福を

 居場所を

 手に入れていれた


 君の生に幸あれ。

(終)

---------------------------------------------------------

 誕生日の日はその人のものだと思う!それだけの荒磯時任捏造話でした!(土下座)

 時任誕生日おめでとう!!!!!