style』
たとえば、いつでも愛しい君が、手を伸ばせば触れることの出来る場所に居たら、とか。
「信じらんないよねぇ」
「何がだよ」
想い、願うだけだったそんな事が、今ちょっとだけ現実になってるという、ゲンジツが。
「ほんと、ありえないって感じ?」
「あのな。俺にしてみれば、お前がこんな時期に38℃近い熱を出す方が信じられねーし、そんだけ熱あっても学校に出て来る方がありえねーよ」
呆れ混じりの溜め息を付きながらも心配そうな表情で、熱を確かめるように俺の頬に触れる。
添えられた時任の手の冷たさに瞬間驚いたが、すぐに頭の下に宛てられたアイスノンの存在を思い出し、その心地よさに目を細める。
「まぁ、ちょっとは体調悪いかな、とも思ったんだけど」
「だったら無理なんてすんなよな」
そりゃあ無理もしちゃうよ。だって、今は夏休み。
何気に忙しそうな時任に会おうとするならば、その手段は夏休みも関係なく行われる執行部の雑務に赴く他にない。
それっきり黙ってしまった時任が、部屋の時計を気にする素振りを見せた、その時。
「ねえ、時任。バイトしない?」
「バイト?」
ふと頭に浮かんだ、あるいはずっと前からあったかも知れない言葉が、時任が帰宅を告げるよりも早く口を付いていた。
「そ。俺って自己管理が出来ないみたいだから?ちゃんと側で管理してくれる人が居ないとダメみたいなんだよね」
時任は不思議そうに俺の言葉を聞いていたが、その意味を飲み込んだ瞬間、にやりと笑った。
「待遇は?」
「完全住み込みで、三食の食事付き。どう?」
「よし、のった!」
それから程無くして。
迎えた久保田の誕生日を祝うついでのように、時任は401号室に移り住んだ。
end.
捏造も甚だしい所ですが、久保ちゃん誕生日おめでとうって事で(逃)
犬´さま、今年も素敵な企画をありがとうございます!