誕生日というものを知ったのは小学生に上がってからだった。
担任の先生が『○○くん、○○ちゃん、誕生日おめでとう』と朝のホームルームの時に声をかけていたからだ。
その後に調べて初めて、8月24日が自分の誕生日だと知った。
夏休み中なので自分に誕生日を教える者はいないので自分でも忘れがちだった。
誕生日とは何かの書類に記入するときに思い出すだけのものだった。
人に聞かれて思い出したこともあった。
確か中学2年の頃だ。
よく出入りしてた雀荘の常連の女がいて雑誌の星占いコーナーを広げながら尋ねられた。
「久保田くん、君の星座ってなぁに?」
「星座?知らないねぇ」
「じゃあ調べてあげる。誕生日はいつ?」
「8月24日だけど」
「やっだ今日じゃない!」
「それが?」
「それがじゃないわよ!お祝いしなきゃ!」
そう言って俺を連れ出し飲みに連れて行かれた。その女は3つかそこら上なだけなのでお互い未成年だったけど。
暫くその女と付き合ったが自然と別れた。
後から考えてみると人にお祝いされたのはあれが初めてだった。
プレゼントをもらったこともあった。
中学3年になった頃だっただろうか
執行部になったせいで夏休みだけど学校に行くことがあった。
「誠人、今日誕生日だったな」
「・・・あ、そういや今日8/24だったっけ」
「忘れてたのか?」
「うん、すっかり」
「お前らしいな。・・・ほら」
松本が何かを放ってきた。
受け取るとセッタだった。
「プレゼントだ。誕生日おめでとう」
「・・・どーも」
そんな日もあった。
そして今は・・・
目の前で執行部の皆がケーキにローソクをさし火をつけていた。このケーキは桂木ちゃんが作ってくれたらしい。ケーキの横にはから揚げやサンドイッチなどが置かれていた。これらは室田と松原が用意してくれたらしい。
「ケーキ準備できたぞー」
「よし、んじゃやるか!」
「スイッチオン!」
相浦がパソコンのキーを押した。すると馴染みなあの曲が流れ出した。
「「「「はっぴーばーすで〜とぅ〜ゆ〜♪ はっぴーばーすで〜とぅ〜ゆ〜♪」」」」
桂木ちゃんと相浦と室田と松原が一斉に歌いだした。
「「「「はっぴばーすでーでぃあ くぼとき〜♪」」」」
くぼとき?久保田&時任の略ですか。
「ちょっセットかよ!」
そうなのだ。実は二人一緒の誕生日会だったりする。8/24は登校日じゃないので時任と一緒に誕生祝しようということになったのだ。何でも俺様一番の時任は文句を言ったし、俺は俺でそんなのしなくていいと言ったが『史上最高コンビなんでしょ?どっちかをお祝いしないならどっちもしないわよ!』の桂木ちゃんの鶴の一言で黙らされた。
「「「「は〜っぴばーすでーとぅ〜ゆ〜♪」」」」
「久保ちゃんローソク」
「ん」
「せーの!」
ふっ!
二人でローソクを消した。
「「「「二人とも誕生日おめでとう!!」」」」
ぱちぱちぱち〜と一斉に拍手された。
執行部の皆に祝われて、時任が横にいる。
なーんかね、こんなふうになるとは思わなかった。
「?久保ちゃん何にやにやしてんだよ」
「んー、歳をとるのも悪くないかな、なんてね」
「・・・ジジくせぇ」
「そお?」
「普通はもっとジジイになってから言うもんだっての」
「まあ確かにね」
「でも、良かったな」
「うん」
ホントにね。
「あ、そだ、言い忘れてた」
「ん?」
時任がこちらを向いて、ニッカリとあの眩しい笑顔を見せた。
「久保ちゃん誕生日おめでとう!」
うん
誕生日を祝える自分におめでとう。
(終)