05 一緒に過ごしたい相手は?
「 食べてくれる人or作ってくれる人 」
時任に誕生日プレゼント何がいい?って聞いたら
「俺様一度フルコース料理っての食ってみたい」
とのたまわった。
んじゃどっか食べに行く?と聞いたら
「堅苦しいとこはパス!家で食いてー」
と更にのたまった。
ホントわがままなんだから・・・
まあ俺もそんなこじゃれたレストランなんか行きたくないからいいでしょ。
愛しのネコ様のためにはたまには気張らせて頂きます。
* * * * *
9月8日当日、時任には夕飯まで外に出かけてもらっていそいそと準備に勤しんだ。
夕方には準備完了。
1日限定の「びすとろ久保田」開店!(笑)
「たっだいまー」
「おかえり、準備できてるよー。手洗ってリビングに来な」
帰ってきた時任はリビングを見て驚いた。
「お!すげー!ちゃんとテーブルに花が飾ってある!」
「誕生日だしね」
「テーブルクロスまでしてる!こんなんうちにあったんだ」
「あ、コレ、シーツ」
「ヲイッ(怒)」
「まあまあ、料理はちゃんとしてるから期待して?」
「ホントかよ・・・」
「久保ちゃんの愛を信じないさいって。ほら座って」
「おう」
「はい、まずは食前酒とオードブル」
時任の目の前にロンググラスと前菜を盛り合わせた皿を置いた。
「食前酒とオードブルってなんだ?」
「フルコースってのは、オードブル、スープ、メイン料理その1の魚料理、その2の肉料理、最後にデザートを食べることを言うんだよね。食前酒は文字通り食事の前に飲むお酒。オードブルも前菜ともいってメイン料理の前に出される料理のこと。どちらも食欲を増進させるのが目的だから少量なの。最初は少しずつ食べさせて段々とボリュームのある料理になっていくってわけ」
「へぇ・・・」
「本日は計5品の料理が出る予定ですがお腹の方は大丈夫ですか、お客様?」
「腹減ってるから大丈夫。全部食えるって」
「そりゃ良かった、んじゃ乾杯して食べよ?」
「おう」
自分も時任の前に座ってグラスを傾けた。
「「乾杯!」」
カチンとグラスを鳴らしディナー開始。
「あ、この酒ってジンジャーエールじゃん」
「うん、ジンジャーエールにウォッカとライムを入れたモスコミュールってカクテル。時任ジンジャーエール好きだから気に入ると思って」
「ん!こういうの好き」
「良かった
「こっちは?」
「前菜は鴨の冷製パテとピクルスの盛り合わせ」
「へー、なんか美味そうだな」
うん、横浜の某有名店のやつだから美味しいはず。デパ地下って便利だねぇ。
本日の料理は買った料理にちょっと手を加えて綺麗に盛り付けたのが主だ。器用な俺でもさすがにフルコース料理を一から作るのは難しい。素直にデパ地下のお世話になることにした。無理してあんまり美味しくないものより無理せず美味しい物の方がいいに決まってる。時任は意外と食べ物にうるさいしね。
「お、このパテってのウマい!」
「良かった」
お次はスープ。これも買ってきたトマトポタージュにパセリとクリームを飾る。赤いスープに白と緑の色が映えて見た目鮮やかだ。
「お、キレーじゃん♪」
自称美少年はキレイな物が好きだから目も楽しませてあげないとね。
お次はメインの魚料理。買ってきた秋鮭のパイ包みを温めて、周りに温野菜を飾りバルサミコ酢で作ったソースをかける。ソースっていってもバターと酢を一緒に煮ただけだけどね。
「秋鮭?そういや鮭って秋だったっけ。サクサクしてウマイな」
うん、季節を感じさせるのも大事です。
最後のメインは肉料理。これだけは自分で作った。肉を焼いてその肉汁で作った赤ワインソースをかけただけだけど良い肉を使ったから美味しいはず。
「飛騨牛のフィレ肉ソテー赤ワインソースです」
「ってあのめっちゃ高いっていう高級牛か!」
「そう。ちょっと奮発しました」
「うまそう!頂きます!」
ブランド牛ってのはインパクトあるねぇ。
「うん、ウマい!肉やわらけーのな!」
「良かったv」
さすが高級肉。1kg3千円する価値はあったようだ。
時任はあっという間に完食した。
「はぁ〜腹いっぱい。美味かった!」
「満足した?」
「おう、満足満足。サンキューな!」
「それは良かった。でもまだデザートがあるんだよね」
「そだった。デザートは何だ?」
「最後のデザートはこれから選んでもらおうかな」
「あ?」
時任の目の前にデザートのメニューカードを差し出した。
「どれがいい?」
メニューカードに書かれていたのは…
1、生クリームの苺シロップかけ(砂糖一袋入)
2、kubo chan
の二つだった。
「〜〜〜!!!!!何じゃこりゃぁあああ!」
「何ってデザート」
「1は食えそうなシロもんじゃねーけど一応デザートとは認めてやろう。けど2はどーみても違うだろッ!」
「そんなことないよ。ほらこんな本もあるくらいだし」
そう言って差し出したのは『デザートはあなた』という文庫本。
「いやー、メニューの参考に本屋に行ったら料理本のとこにこれがあってねー。コレだ!って閃いた」
「閃くな!これは料理じゃねーだろうが!物語だっての!」
「でも自分が好きな極甘デザートも作っちゃったけどね」
「人の話を聞けッ」
「あ、デザート食べないって選択肢はありません。それはマナー違反です」
「え、そうなんか?」
「そうです(嘘)。それに最初に『全部食べる』って言ったの自分でしょ?」
「ぐ…」
「さ、選んで♪」
時任は脂汗をたらしなが悩んでいた。甘ったるい1は嫌だ。けど2もゴメンだ。この後どーせ行為になだれ込むだろうから食べなくていいもんは食べずに済む2を選ぶか?でもでも「kubo-chan
を食べるんでしょ?」とか言って何をさせられるかわからなくて恐ろしい。そんな風にぐるぐる悩んでるのが丸わかりの表情だ。
時任の誕生日だけど俺も頑張ったんだからご褒美が欲しいだけなので2を選んでもそんな変なことをさせるつもりはない。
ただ「kubo chanが食べたいって」聞きたいだけ(鬼)。
本当はデザートも用意してるけどそれはまだ内緒。
火照った体に美味しいアイスクリーム。
ちょっとした運動後に食べようね♪
さて、
1を選べば甘味地獄。
2を選べば快楽地獄。
時任くんはどっちを選ぶでしょうか?
さあ DOCCHI !?
(終)
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