04 過ごしたい相手は?
「いちばんのごちそう」
夕飯の支度中にふと時任が聞いてきた。
「なぁ、誕生日何食いたい?」
そんなの言わずもがなだけど一応口にしてみる。
「そりゃやっぱとき・・」
「ストーップ!”と”がつくもの以外で!」
「んじゃみの・・」
「”み”も禁止!」
「えー、・・・んじゃカレーでいいかな」
特に食べたいものが思いつかなかったので目の前にあるモノを答えてみた。
「そんなんいつも食ってんじゃんか!今も作ってるし!」
「うーん、他に思いつかないし?」
「せっかくの誕生日なんだからご馳走とか食いたくねーのかよ!」
一番のご馳走を禁止したのは誰よ、ねえ?
「ご馳走ねぇ・・・」
「おうよ、何かねーのかよ」
「これもちょっと工夫すればすごいご馳走になるんだけど」
「あ?カレーがかよ」
疑いの眼差しで睨みつけられた。カレーをバカにしちゃいけない。人間工夫を忘れちゃお終いよ?
「こうすんの」
「え?」
お玉でカレーを少しすくい、息を吹きかけてちょっと冷ます。それを、ポタリ、と垂らした。
・・・時任の腕に。
「ちょッ何すんだよ!」
当然怒る時任の腕を取り、べろりと舐める。
「な!!!」
ついでに指ですくい頬にもちょっとつけて、またべろりと舐める。
「ね?こうして食べれば結構なご馳走になると思わない?」
あらあら時任くんてば真っ赤だよ。いつまでも初々しい反応で嬉しい限り。もっとすごいこともたくさんしてるのにねぇ?
「な・何考えてんだこのエロ親父!!!」
「いやー、料理の器って大事だなぁって」
飾ってヨシ、眺めてヨシ、しかも最後まで食べれるなんて、なんて最高な器。誕生日という特別な日に使わない手は無いよねぇ?
「〜〜〜器も使用禁止!」
苦し紛れに真っ赤になりながら時任が怒鳴った。
んじゃどうやって食べるの?手で食べさせてくれるの?
『それもいいかもしれない』
なんてどこまでも自分に都合の良い妄想に浸る久保田くんでした。
(終)
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