久保時生誕祭2007 投稿作品


[48] ☆☆☆全力で祝・時誕2☆☆☆  
榊 樹理 [HOME]  投稿日:2007/09/09 (Sun) 02:38    
蘭摧玉折

嵐の後には


花弁一つ 残らない


「久しぶりだなー何か。こーゆーの」

たたっという軽やかな足音を立てて鉄柵に駆け寄った時任は、俺を振り返って少し笑った。

柵の向こうは夜の海。

暗い。

俺も、微笑む。

「デートが?」

「ちっげーよッ!!フツーに散歩すんのが!!」

途端に顔を赤くし、間髪入れずに否定されてしまう。

散歩もデートも変わらないと思うけどねぇ。だって俺達、ラブラブなんだし。

「そーね」

大いに反論したいところではあったけれど、今日は時任の機嫌を損ねるワケにはいかない。

それに、時任は照れてるだけだって分かってるし。

「何でだっけ?」

「お前が暑いから外に出るのヤダーって引きこもってたんじゃない」

「あー、だってあちーもんよ」

「夏だったからね」

もう、秋か。

初秋の空気はまだ夏の残滓を含んで生暖かい。

昨日上陸して陸を荒らして行った台風の影響か、風が少し強く、煙草の煙と目の前の黒髪を好き勝手に散らした。

其処彼処に、風によって引き千切られ撒き散らされた枝や木の葉が見える。

植え込みの花も無残に毟られたようになっていた。

時任の隣に立つと、海を背にして柵に凭れる。

逆に海の方を向いている時任は、ライトアップされて夜に映える観覧車を見上げた。

海の傍の、小さな遊園地。

「観覧車見んのも久しぶりだなー」

「乗る?」

「野郎二人で乗らねーよッ」

基本子供っぽいくせに、時任のこういうトコロは凄く淡白だなぁと思う。

まぁでも、何時もよりはしゃいでるみたいだけど。

可愛い。

時任は何をするでもなく、何を言うでもなくただ俺の隣で観覧車を眺めながら夜風に吹かれている。

俺は煙草を吸いながら、時任が何か言うのを待っていた。

外出したのは、時任がそうしたいと言ったから。

ファミレスだけど飯も食ったし、ケーキも食った。

後は。

一昨年、時任の誕生日を決めた。

だから、去年祝った。

そして今年もこうしてまた、二人でお祝いしている。

でも、今年は、何故か。

あまり祝いたくない。

めでたいと、思えない。

「ごめんね」

「……あ?」

突然謝った俺に、時任が訝しげな表情をする。

その顔が曇る事を承知で俺は言った。

「ホントは俺、お前の誕生日、あんまり喜べない」

一昨年祝って、去年祝って、今年祝って、来年も、再来年も。

時間は確実に過ぎ行く。

この日が来る度に思い知る。

いつか来る終わりを、意識してしまう。

今だけでいいのに。

「……なんで?」

暫しの間を置いて、時任はそう聞き返した。

怒るかと思ったけれどその顔に怒りはなく、不思議そうな色が浮かんでいる。

「年取るって、その分死に近付くってことじゃない?」

変だ。

死にたくないなんて、まるでマトモな人間のようなことを。

俺の言葉に時任は眉を顰めた。

柵から身体を離して数歩、背中を向けて俺から距離を取る。

「別に、俺が生まれたことなんて祝わねぇでいーよ」

責めもせずあっさりと時任は言った。

真意が掴めず、今度は俺が眉を寄せる。

細い背中からは何の感情も読み取れない。

「俺だって正直、誕生日の何がそんなにめでてぇの?って感じだし。でも」

時任が振り返った。

「今を祝うんだろ」

「俺様の生まれた日に、俺様と今此処で、俺様と居れることを喜べよ」

「……そっか」

時任の生まれた日を、時任と今此処で、時任と居れることを喜べと言われて、喜ばない筈がない。

それは身震いするような奇跡だ。

死を恐れてしまうほどの。

過ぎ行く時間を勿体無いと感じてしまうほどの。

柵に凭れていた上体を起こすと時任の前に立った。

見上げてくる瞳と視線を重ねる。

「誕生日おめでとう、時任」

日付が変わった直後、飯を食う前、ケーキを食った後、何度となく言った言葉をもう一度繰り返す。

でも嬉しくて言ったのは、これが今日初めて。

「サンキュッ!」

何度となく言われた言葉でも、その度に変わらぬ笑みを時任は浮かべる。

愛しいと思った。

生まれてくれて嬉しいと、今生きていてくれて嬉しいと思った。

それは、嘘じゃない。

「誕生日プレゼント、何がいい?」

ファミレスだけど飯も食ったし、ケーキも食った。

後はプレゼントを渡すだけ。

何でも献上させて頂く気で尋ねると、

「誕生日は自分をプレゼントにするもんだろ」

当然のようにそう言い放たれてしまう。

結構大胆ね、お前。

「じゃ、俺をプレゼント」

「おー」

「リボン付けて」

「いらねーよッ!」

リボンを付けた俺を想像したのか、おかしそうに時任は笑った。

その笑顔の為なら、何を捧げてもいいと本気で思った。

肉も皮も血も骨も。

俺の全てを。

死でさえも。

それこそ、死ぬほどに。


美しい花は、散る姿でさえも美しい。


その瞬間まで、一時も目を離さずに見ていたいと思う。


そしていつか共に散ることを、想う。


〜HAPPYHAPYYBIRTHDAY!!!〜


犬’さまのお優しい言葉に、調子に乗って四回目です(滝汗)
誕生日、ホントにホントにおめでとう時任!!!
ホントにホントに愛してる!!ラブ!!

四度目で恐縮ですが、ホントにホントに有難う御座います犬’さま!
どうかお体に気を付けて最後まで頑張って下さい!!


■犬’  -2007/09/09 (Sun) 23:01 *1回修正
あはは!また投稿してくれたんですね!そんな貴女が大好きですv
いやーもう樹理さんの時任らぶには頭が下がりますし、触発されてヤル気がでます。
負けませんからね!(競ってどうする)
あとちょっとですが楽しんで下さいませv

PS:時任くんはもらった久保ちゃんをどう処理するんすかね?ひっじょーに気になります(笑)