LovemissionⅡ |
「外は秋の長雨、ベランダに水玉、中は花柄。・・・これは男のロマンを決行するときだね!」 とある休日の昼下がり、ジーンは腰に手を当て指をピストル状に顎にあてながら宣言した。目から光が飛び出しキラーン!と擬音が聞こえそうな勢いだ。 因みに水玉と花柄は麻衣の洗濯物のこと。長雨続きで外に干せない洗濯物を屋根付きベランダと室内で干している。乾燥機もあるが秋冬の衣類は乾燥機を使えないモノが多いらしい。何より倹約家な麻衣は乾燥機を嫌っている。緊急時以外は使わない。 「ナル、協力して!」 「断る」 何を思いついたか知らないがこういう顔のジーンが思いつくことは碌な事が無い。ナルは無視して本を読みつづけた。気の乗らないナルに向かってジーンは「いいのかな~?」と意味ありげにニヤリと笑った。 「○○寺院の古文書の写し、見たくない?」 イタリアの古い寺院の名前にナルの動作が止まる。寺院の古文書は持ち出し不可や門外不出の品が多い。許可を取りわざわざ出向かなければ読めないものが殆どだ。それをどうやって手に入れるというのか・・・。 「何故お前が持っている」 「ネットで知り合った友達から貰った。某宗教国の古文書翻訳部門にいるらしいから確かだよ♪」 ジーンの顔が広いのは知っていたが、それはネット世界でも通用するらしい。相も変わらず謎な人脈だ。 ナルは溜息をついて本を閉じる。ナルにとって読書欲に勝るモノは限りなく少ない。 「・・・何をするんだ?」 「ヤッタ!」 小躍りしたジーンからホットラインで伝えられた内容はやはり碌でもないモノだった。 * * * 「明日も雨なんだって。参っちゃうよねー・・・」 リビングに干してある洗濯物を眺めながら、家事担当の麻衣は室内の洗濯モノを眺めながら困ったと溜息をついた。一人分なら一週間くらい平気だけど、三人分だと結構な量だ。使用済み衣類で洗濯物置き場が溢れる前に洗濯しなければいけない。雨でも室内や屋根のあるベランダに干すしかない。 「室内だと乾きにくいし、湿気るし、やなんだよね」 「乾燥機を使え」 「まだ困るほどじゃないから使いたくない。衣類痛むし、電気代かかるもん」 ナルの提言に麻衣は予想通りの答えを返した。 そこへジーンがやってきて「麻衣、これ使えば?」と有るモノを差し出した。 「扇風機?」 ジーンが持ってきたのは麻衣が一人暮らしの時から使っている扇風機だ。三人で暮らし始めてエアコンのある家に住んでも、倹約家でエアコン嫌いの麻衣は毎年この年代物の扇風機を使っている。今年も立派に活躍してくれて、夏の終わりに仕舞っていた。それをわざわざ出してきたらしい。 「これなら乾燥機ほど電気は使わないし、いいんじゃない?」 ジーンは言いながら洗濯物に向けて扇風機をセッティングした。スイッチを入れて回せば、窓際に干された洗濯物に風があたりゆらゆらと揺れ始める。 「こうしとけば少しは早く乾くんじゃない?」 「そうかも!ジーンありがとw」 「どういたしまして。お礼はミルクティーでよろしく」 「あはは、分かった。今淹れるね! 麻衣がジーンに満面の笑顔でお礼を言い、お茶を淹れるためにキッチンへ向かおうとジーンに背を向けた。 するとキラーン!とジーンの目が光った!! 『今だ!』 ジーンはサッと扇風機を倒し、麻衣の足もとへ風を向けた。 今日の麻衣の服装は白いTシャツの上に薄ピンクのニットカーディガンを羽織り、下は膝下丈のフレアスカートを履いていた。室内着ながらフェミニンな装いだ。フレアスカートはチューリップのようにふわりとしている。そこに足もとから風を向けられれば当然捲れるわけで・・・ 「キャーッ!」 マリリンモンローさながら、麻衣は風でめくりあがるスカートを押さえる羽目になった。しかし背後にいたジーンには隠せない。麻衣のお尻は丸見えになり、赤地にピンクの水玉模様の三角形の布をヒモで結んだショーツ、いわゆるヒモパンまではっきり見られてしまった。 バッチリ見えたジーンは歓喜の表情を浮かべ、すぐナルへホットラインを送った。 『ナル!今だよ!』 『・・・了解』 ナルはジーンの視界を借り、見えない筈の場所からPKを使った。 すると扇風機の風に揺られていたヒモパンのヒモが何かに引っ張られ、結び目が解けた。 『オッケー!』 両の結び目が解けた三角形の布は当然支えるものはない。運悪く麻衣は足を開いたまま前を抑えていた。遮るもののない布は重力に従いハラリと落ち、扇風機の風にあおられてあらぬ方向へ飛んで行った。 「えッちょッ何コレっ!!」 目の前を飛んで行った下着に驚愕する麻衣。 しかし手はスカートを押さえるのに忙しく掴むことが出来ない。 そして飛んで行った先には・・・ 「獲ったどーーー!」 麻衣のヒモパンを握りしめてガッツポーズをとるジーンがいた。 「ジーン返してよ!」 「駄目♪」 ヒモパンを握りしめながら天使のような笑顔は浮かべないで欲しい・・・。麻衣はものすごいギャップに一瞬目眩がした。しかし気を取り直して抗議する。 「駄目じゃなくてホントに返して!他は全部洗濯しちゃっててそれしかないんだから!」 ジーンに盗られたヒモパンは着物用の下着だ。麻衣は布地面積の小さいモノより大きいしっかりした下着を好むので普段は使わない。しかし雨続きで洗濯が間に合わず仕方なく履いていた。 「知ってるよ。だから駄目」 「は?」 「ノーパンに恥じらう恋人ってのも憧れてたんだよね。だから今日はそのままでいて?」 じゃあ麻衣がヒモパンを履いてるのを分かってやったというのか・・・。下手すると麻衣のパンツの数まで把握してるのかもしれない。 「パンツ取りたかっただけなら何でこんな手の込んだことするのよ。わざわざ扇風機まで出してナルまで巻き込んでする必要がある?」 恋人なんだからこんな方法でなくともパンツを取る方法はいくらでもある。それこそ正攻法でとればいいだけだ。麻衣は頭痛を堪えながら問うと、ジーンはしれっとして答えた。 「普通にとっちゃつまらないよ」 ブチッ、その言い様に麻衣が切れた。 「人のパンツ取るのに普通も普通じゃないもあるか!普通じゃないっての!!」 「だってマリリンのパンチラシーンて男の浪漫なんだよ?一度やってみたかったんだ」 ジーンはにっこりと微笑んで首を傾げながら言った。 だからヒモパンツ握りしめ~(以下略) もうあまりの馬鹿馬鹿しさに怒る気力が萎えた。 「ばっかじゃないの?」 麻衣は心底呆れるように言ってナルの自室に消える。そして出てきては「ナルのパンツ借りたから」と、あっけらかんと言った。 「は?」 「えぇぇッ!」 「二人のパンツはボクサータイプだから私がはいたって平気だもん」 「だからって人のモノを履く馬鹿がいるか」 「緊急事態だから仕方ないっしょ?」 三人同棲も数年目となれば昔のような恥じらいはない。もう夫婦のノリだ。この寒い時期にノーパンでいるよりは、洗濯済みの旦那のパンツを履くほうが断然マシである。これくらいで躊躇いはしない。 「洗濯済みの男モノパンツなんて全然萌えない・・・せめて使用済みが・・・」 「・・・・・・・・・」 ジーンはがくりと肩を落として項垂れた。神経質なナルは自分の下着を麻衣とはいえ使われるのは少々気分が良くなかった。 ノーパンライフという変態男の夢を無残に破り、共犯者に少しばかりの意趣返しを果たした。 今回は双子の完敗だった。 「・・・それより二人とも、歯ぁ食いしばって」 麻衣は手をかざしながらにーーーっこりと笑った。でも目は笑っていなくて・・・ 「「・・・・・・・・・」」 ばっちん!ばっちん! 二人の頬には見事な紅葉が咲いたそうな・・・。 数日後 「そう言えばあのときのパンツどこやった?」 「内緒~」 「ジーンが履いている」 「馬鹿!バラさないでよ!!」 「ヤダ!知りたくなかった!!」 再びじゃれあう三人が見えたそうな・・・。 (終わっとけ) |
ついったでネタ振りされたヒモパン話から派生したブツでございます。 ヒモパン→ジーンは絶対ヒモ外しそう→セクシー&ジーンと言ったらスカート捲りで有名な本名ノーマジーンさん→ついでにヒモパンツも飛んで行け! こんな連想してしまった私は大変頭が悪いと思います。皆さん呆れることでしょう。でもでも書いてて楽しかった!馬鹿二人書いてて楽しすぎる。 色っぽいネタじゃなくてざーせん! 2011.11.24 |
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