It's secret!

「どーせESPあるなら、ポストコグニションとかじゃなくて、もっと違うのが良かったな~」
 資料整理の合間、退屈してきた麻衣がぼやきはじめた。先日ジーンがぼやいた内容と同じだ。変なところで似ている二人である。
「僕も霊媒じゃなくてナルみたいなPKとかのが良かったな」
 同じく退屈し始めたジーンが麻衣の話にのった。二人とも無駄口を叩くなと言いたいところだが、手は休めてないので見逃してやる。
 先日の地震で事務所の資料室と僕の書斎は書籍やファイルが飛び散り大変な状態だった。とりあえず本とファイル類は所定の場所に戻したが、それぞれからはみ出た書類や写真等は積み重ねたままだった。それを空いてる時間に少しずつ整理している。事務所の資料室を先日やっと終えたので、今度は自室の書斎に手をつけている。ちょうど三人暇な今日、一気に片付けようと朝から取り組んでいる。そして今は3時、6時間以上やっていれば誰でも飽きる。僕も例外ではない。

「そうなの?私はPKはリスクが高くて嫌だな。二人みたいにチャージする相手がいないから怖いよ」
「コントロールして暴走しなければそれほど消耗しない」
「ふーん、あとは気力体力次第?」
「ああ。その点麻衣は心配いらないだろう?」
「何その微妙な言い方。どーせ体力自慢ですよ!」
「分かってるならいい」
「何か腹立つな。PK持ってたらナルにしごかれそーでやっぱ嫌だい」
「じゃどんなのが良かった?」
「そうだなぁ・・・、透視能力とかいーな!」
「透視・・・clairvoyanceか?」
「うん!こうして資料整理するのも早く見つけられて楽そうだし、福袋の中身見えるし、身の詰った西瓜を当てたり出来るよね。便利じゃない?」
 そう言いながら、麻衣は一つのファイルを探し出して写真を収めた。

「・・・福袋はともかく西瓜は無理だと思うが」
「西瓜当てられない?じゃあ身の大きい貝とかも無理かな」
「そうじゃない。密度を測りたいなら透視では無理だろう」
「そうだね。スーパーマンみたいに断面図でスキャン出来るならともかく、西瓜の中身を見ても密度までは測れないだろうね。それならPKで重さを量った方が確実じゃない?」
「んじゃナル今度買い物行くの付き合ってよ」
「断る。手で測れ」
「だよねぇ~」
 麻衣は笑いながら棚の最上段へファイルを戻そうとする。が、小柄な彼女は当然手が届かない。ジーンもナルも資料を膝まで広げていて頼みにくい。しかも予備の椅子も使っている。麻衣は別室から椅子を運ぼうと部屋を出ようとするが・・・

「貸せ」
「え?」
 麻衣の手からファイルが浮かび上がり、麻衣が納めようとしていた最上段へ勝手に収まった。
 もちろんナルのPKの仕業だ。
「ありがと」
「あとは二人でやるからもういい」
「そお?もう少し手伝うよ?」
「でも麻衣は買い物したいって言ってたでしょ?こっちはもういいよ」
「その代わりお茶」
「はーい」
 麻衣はぱたぱたと書斎を出て行った。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 麻衣が出て行ったあと、双子は目を合わせてジーンは大袈裟に、ナルはちいさなため息を落とした。
『危機一髪?』
『かなりな』
『あ~ヒヤヒヤした!心臓に悪いよ・・・』
『なら違う場所に隠せ。ここに置いとけばいずれ見つかる』
『だよね・・・』

 実は麻衣が手を伸ばした最上段には、ファイルの中にカモフラージュされたジーンの宝箱が入っていた。麻衣が触れようとした場所から少し離れているが、第6感を持つ彼女のことだ、何かの拍子で手に取る可能性がある。ファイルにはカギが施されていて開くことはないが、それを不審に思われたらアウトだ。問い詰められたら開けるしかない。
 それが何故見られたら問題なのか?
 それは・・・。

『アレ見つかったらどんなお仕置きされるか分からないよね』
『良くて禁欲一カ月だな』
『だよね・・・』
 ジーンの宝箱の中身は金銭ではない。ジーンお手製の麻衣写真集だ。表紙は『MAI☆LOVE』という頭の悪そうなタイトルだ。
 中身は隠し撮りばかりで構成されており、麻衣の笑顔、泣き顔、怒り顔はもちろんのこと、制服姿、水着姿、下着姿、タオル一枚の姿まである。全裸もあるがチラリズムが好みらしく数は少ない。ちなみに本人が見たら憤死間違いナシの最中らしき写真まである。どれも角度からみてどのようにして撮ったのかとても謎だ。もしかすると念写なのかも知れない。だとしたら大した記憶力と定着力だ。一度試してみたいものだ。
 本人が目の前にいるのにこんなモノを撮っておく必要はないだろうと思うのだが、『コレはコレ、ソレはソレ、だよ』と答えにならない答えを返された。
 こんなモノはジーンの自室に隠すべきだが、自室の掃除をしない(=出来ない)ジーンは度々麻衣に部屋を掃除されているので危なくて隠せない。だが僕の書斎なら麻衣は滅多に入って来ない。しかも最上段の隅なら手も届かない。隠し場所に丁度いいから貸してくれとジーンから打診され、取引の末に置くことを許可した。
 だがここも安全とは言えない。今のように整理のため麻衣が出入りする日々が続いている以上、見つかるのは時間の問題だ。もし見つかったら自分も連帯責任としてペナルティを課せられる可能性がある。僕の場合は禁欲より夜深し禁止令など出されそうで大変迷惑だ。

『貸し金庫でも借りろ』
『アレ小さいんだよ。入りきらない』
『なら捨てろ』
『駄目だってば!ナルだって麻衣の寝顔シリーズは気に入ってるでしょうが!!』
『・・・・・・・・・』
『いっそのこと壁か天井にに穴開けて隠そうかなぁ・・・』
『開けるならお前の部屋にしとけ。そしてぼーさんに人避の札でも書かせて張っておけ』
『あ、それいいかも。穴が開けるまでとりあえず事務所に・・・』

 コンコン!ガチャリ、

「お茶入ったよ~、こっちで休憩するでしょ?」

「ああ」
「ありがと!今行く~」

 暫くは気の休まらない日々が続く双子だった。



(終わっとけ)


どんどんジーンが変態になっていく・・・ごめんなさい。
ジーンなら念写くらい出来るだろと思ったのが元ネタです。あと西瓜食べたい西瓜。


2011.05.13
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