Shall we ?![]() 絵:こまちさん |
「うっひゃぁ~・・・別世界だ」 「大袈裟だなぁ」 「大口開けるなみっともない」 ナルとジーンにエスコートされて踏み入れたパーティ会場はキラキラしていた。 まどかに『ドーリー卿主催のパーティがあるの。気軽な内輪パーティだから遊びにいらっしゃいよ』と言われてほいほいと来てみたら、とんでもなく豪華な会場に麻衣は驚いた。赤い絨毯の床、天井にはキラキラとしたシャンデリア、壁や柱にはアールデコ?アールヌーボー?そんな彫刻で装飾されていた。根っからの庶民育ちの麻衣がポカンと口を開けて驚くのも無理は無い。 室内に入ると小さなホールに着飾った紳士淑女がいっぱいいて優雅に談笑していた。あまりの別世界振りに目眩がしそうだ。二人がいなければさっさと逃げ帰っていただろう。 麻衣はびびりつつも二人に促され、知り合いに挨拶したり、飲み物や食べ物に口を付け始める頃には、すっかりくつろいで上機嫌になっていた。 「このカクテル美味し~♪」 「単純な奴だ」 「うっさいなぁいいじゃんか」 「甘いけど度数高いよ。気を付けて」 「はーい」 三人で和やかにしていると、 『How long time see you ?』 一人の老紳士が穏やかな表情で話しかけてきた。二人の知り合いらしく、和やかに英語で会話し始めた。ナルと何か論文の話をしてるらしいが麻衣にはチンプンカンプンだ。麻衣は一歩下がった場所で眺めていたら、老紳士がこちらを見て何かしゃべった。 「Doctor is with a pretty woman. Is she your lover?」 「No,kiddinng. She is Mai Taniyama ,just a enployee.」 どうやら自分のこと尋ねられたと気付いたが、早くて聞き取れなかった。麻衣は隣のジーンの服をちょいちょいと引っ張る。 「何て言ったの?」 「『お連れの可愛いお嬢さんは博士の恋人ですか?』『ご冗談を、彼女は谷山麻衣、ただの部下です』」 「ふーん・・・」 さすがに『僕達二人の恋人です』とは紹介できないだろうが、もう少し言い方ってのがあるだろうに。『ご冗談を』はないだろう。本当は恋人の麻衣は少々面白くない。 「ナルは照れ屋だから」 「照れ屋・・・そんな可愛いもん?」 「一応ね」 日本語でこそこそ話していたら老紳士がジーンに向かって質問した。 『ではユージンの恋人かな?』 『はい♪』 『ジーン・・・』 ジーンの恋人発言に麻衣は赤くなり、老紳士は破顔した。渋い顔をしているのはナルだけだった。 二人のホットラインでは 【ナルが恋人って言わないなら僕が恋人でいいでしょ?問題ある?】 【・・・・・・・・・】 などの会話がされていた。 『そうかそうか、可愛いお嬢さんを見つけたね。ジーンはラッキーだ。麻衣、ジーンをよろしく頼むよ』 『は、はい///』 「えへへー、よろしくされちゃった」 「うん、よろしくー」 麻衣とジーンはほんわかと笑いあう。しかもさっきまで三人で腕を組んでいたのに、麻衣はジーンに寄り添ってジーンとだけ腕を組みなおした。恋人同士なのは麻衣とジーンだと言わんばかりだ。 今度はナルが面白くない。無表情な顔のまま不機嫌オーラを漂わせた。 「何でそんなに不機嫌な顔してんのさ」 「別に」 「恋人じゃないのに腕を組むのはおかしいでしょ?」 「・・・・・・・・・」 「そう言えば一度もナルに恋人なんて言ってもらった事ないし?表向きは部下として接してた方がいいよねー」 「麻衣」 麻衣はナルに呼ばれてもつーんとそっぽを向く。 三人いる時に自分の事を聞かれた時、ジーンは「僕達のガールフレンドです(=just friend yet」って紹介してくれるのに、ナルは「部下」か「従業員」か「被験者」だ。ナルの場合は仕事相手に聞かれることが多いので仕方ないと思うけど、『ご冗談を』とまで言われたら面白くない。本当は怒ってないけど拗ねてるんだと意思表示だ。 「『ご冗談を』なんて言うからだよ。あの人なら『僕達のガールフレンドです』で良かったのに」 「・・・・・・・・・」 「一度くらい『麻衣は僕の恋人だ』って言ってみたら?」 困ってるナルにジーンがからかうように言ってやる。 ナルは麻衣に対して『好きだ』すら言ったことが無い。時にはちゃんと意思表示しろとジーンは言いたいのだ。 一瞬、ナルは考え込んだ後 「麻衣」 「何さ」 「お前が着ているその上から下まで、何を使って購入した?」 「・・・ナルのカードです」 選んでくれたのはジーンだけど、その支払いをしたのはナルだ。いつもそういう役割だ。 「僕はただの部下に服を贈ったりしない」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「何でこんな負けず嫌いなの?」 「うーん、ナルだから?」 「ナルシストのナルの方ね」 「そうそう」 数秒絶句した後、二人は呆れたように呟いた。 今度はナルがそっぽを向いた。彼も自分が素直じゃない自覚はあるのだ。 「ま、仕方ないか。ナルだしね」 麻衣は一つため息ついて、ナルにも腕をまわしてあげた。 三人仲良く腕を組みながらパーティ会場を後にした。 ~お約束~ 「楽しかったけど疲れた~!ドレスって肩凝るね。さっさと脱ごうっと・・・」 「駄目だよー麻衣」 「まだだ」 「へ?」 「「男が女に服を贈るのは、男が脱がせるためだから」」 「こんなときばっかハモるな~~!!!」 抵抗空しく麻衣はぺろっと剥かれて頂かれたそうな(合掌)。 (終わっとけ) |
人様のリクエストに文を押し付けるのは気が引けたから遠慮してたブツです。でもこまちさんがいーよーって言ってくれたので書いてみた。 ナルにああ言われたら麻衣拗ねるだろうなー、当てつけに麻衣がジーンと仲良くしたらナルは拗ねるだろうなーって思ってました。ジーンは聞かれたら「ただのガールフレンド(今はね)」ってな感じに思わせぶりな紹介をしてるに違いない。 ジーンのお財布も同世代より大きそうだけど、印税その他ある博士には敵うまい。そんな訳であの役割分担です。ナルの研究の手伝いをさせられてるので、ジーンはナルの財布は自分の物~な感覚があります。二人共通で必要なモノ(=麻衣の服、食、他)買う時は遠慮なし。家族カード作って麻衣とジーンに渡されてそう。 2011.6.5 |
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