Spring has come!



                                          絵:こまちさん


 夕方、執筆中にのどの渇きを覚えた。
 三時のお茶を飲んだけれど今日はいつもより暖かい上に乾燥しているらしい。一度気になると集中に水を差す。円滑な執筆活動をするためには一杯の紅茶を飲む方が良さそうだ。
 キッチンの方から麻衣とジーンの声が聞こえるので書斎に運ばせよう。
 書斎から出てキッチンに行くと・・・

「ナル?」
「執筆終わったの?」
 
 手を真っ白にして何かを作っている二人がいた。
 白い物はどうやら小麦粉のようだ。小麦粉まみれの手で何かを握ったりこねたりしている。

「いやまだだ。・・・何だそれは」
「天ぷらだよ。知らない?」
「今日は山菜てんぷらとコロッケだよー」

 イギリスにもフリッターという魚フライの衣揚げあるが、菜食主義の自分は食べないので食卓に上がる事は殆どなかった。また食べることに興味がないのと同様、料理にも興味が無い。だからこのように下拵えをするのを見るのは初めてだ。
 僕の訝しげな視線に麻衣は「専門馬鹿はこれだから」と笑いながら手の中のものを説明していく。

「コロッケはじゃがいもを潰して丸めて小麦粉に卵と水でといた衣にくぐらせてパン粉をつけて揚げるの。天ぷらはパン粉を付けないで揚げたもの。ナルの分は片栗粉をまぶして揚げる竜田揚げにするね」
「・・・そう」
「スーパーに行ったらもう山菜がでてたんだー」
「春だよねぇ~」

 二人はわらび、ふきのとう、たらのめ、ぜんまい、など、聞きなれない名前の食材をあげつらねた。食材で日本の春を実感するとは食い意地のはった二人らしい言い分だ。

「もしかしてお茶?」
「ああ」
「手がこんなだから今は無理。終わってからでいいなら淹れるけど?」
「いや・・・」

 料理のことはよく分からないが、二種類の天ぷらを作るのは面倒だろう。料理に疎くともそれくらいは想像できる。

 博士は珍しく自分で紅茶を淹れることにした。

 三人分の紅茶が香る、そんな春の日。





(終)


書いた本人はまだ山菜食べてませんでした!(4/17)
今は食べた後です!(5/28)

【リクエスト内容:料理する二人と茶を所望する博士】
悪戯っ子な表情の麻衣が可愛いww お手伝いしてるジーンが可愛いww 断られて憮然としてる博士が可愛いww 三人とも可愛いから可愛い話にしようと三人でお茶オチにしました。着せ替えがギャグだったので次はほんわかにしたかった。


2011.5.28
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