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Whose is thats !


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「ふぃー・・・生き返るぜ・・・」

 滝川の声に皆が一斉に頷いた。ナルですらため息で同意した。
 今回の調査は山奥の温泉地。露天風呂で夜な夜な幽霊が目撃され、客足が遠のいて困っているから何とかして欲しいという依頼だった。
 露天風呂にカメラを設置し、調査を開始すると早速反応が現れた。雨の日に女性と子供の霊がばっちり観測された。ナルはホクホク顔で調査を続けると、どうやらその女性は温泉地から離れた場所で不慮の事故に遭ったらしい。梅雨の長雨で土砂が崩れ、人知れず彼女は埋もれていた。彼女の遺品が川に流され、露天風呂近くの川に流れ着いてたことから女性が現れるようになったらしい。
 自分を見つけて欲しいという彼女の願いを聞き、ゴーストハンターズは事件現場を見つけて女性を発見して警察に届け、問題の女性は浄化して調査は終了した。
 温泉地と離れた場所で起きたので旅館側には何の問題もなくホクホク顔、データがばっちり取れたのでナルもホクホク顔、双方ともに実りの多い調査だった。

 問題があったとすれば、現象が雨の日にだけ起きたことだ。
 機材のメンテナンスは必須だし、雨合羽を着つつも山歩きをすれば当然濡れる。6月とはいえ夜の山は冷える。びっしょりと濡れそぼっていたゴーストハンターズはガチガチに冷え切っていた。
 気の毒に思った依頼人の勧めでお風呂に入らせてもらうことになった。
 勧められたのは調査場所の宿一番人気の露天風呂だ。もう幽霊は出ないので遠慮はいらない。
 そこで冒頭のぼーさんのセリフである。
 冷えた体に温かい湯は何よりのごちそうだった。風呂場は広く、男5人が入っても余裕で手足が伸ばせた。ぼーさんは手足をだらっと広げて寛いでいる。ジョン、安原、リンはそこまで大っぴらにではいないが、各々岩にもたれかかり寛いでいる。ナルのみいつも通りの無表情で寛いでるとは無縁の雰囲気だ。それでも白皙の美貌に赤い朱が入り、いつもより幼い雰囲気だ。見ようによっては色っぽいかもしれない。

「あー・・・これで酒が飲めりゃ言う事ないんだが・・・」
「言えば出してくれるかもしれませんよ?」
「さすがの俺でもソコまで図々しくなれんよ。・・・でも勝手に持ち込むのは有りか?」
「体に悪いですさかい止めといておくれやす」
 ジョンが困ったように止めると「冗談だよ、冗談!」とぼーさんは笑ったが、半分以上本気だったに違いない。混浴で綾子がここにいたら間違いなく実行していただろう。女性陣は隣の女風呂で幸いだ。

「そういや、こうして全員で風呂入るの初めてじゃね?」
「そうですね。いつも交代ですから」
「そうですのんなぁ。実は温泉に入るのも初めてどす」
「外国にゃあんまないからな」
「所長やリンさんはどうです?」
「私は何回か。ナルも初めてじゃないでしょう」
「・・・・・・・・・」
 無言は肯定の証だ。ジーンを探す旅で何回か入ったことがある。温泉に興味はないし、欧米には大勢で風呂に入る習慣がないのであまり好きになれない。だが部屋に風呂がない場合は仕方なく入浴していた。
「所長!せっかくですからお背中流しましょうか?」
「?」
 背中を流す?湯をかけるということか?意味が分からず無言でいると「洗い場で背中を洗いますって意味です」と補足された。
「結構です」
「いえいえ遠慮なさらず!男同士背中を流し合って親睦を深めるのが日本の伝統ですから!」
「興味ありません」
「そうですか・・・。仕方ないから滝川さんで我慢しますか」
「何で俺!?俺だっていらねーっての!」
「えー、そんなぁ、ノリオのぉ逞しい背中洗ってみたいなぁ」
 ツツツ・・・と背中をなぞられてゾワリと寒気が走る。
「止めろッ」
「つれないなぁ、ノリオのイ・ケ・ズ」
「イテッ!」
 安原がぼーさんを抓った。しかも1オクターブ高い声で小指を立ててシナを作りながらと芸が細かい。冗談だとわかっても鳥肌が立ってしまった。
「・・・何で温泉入ってるのに寒い思いせにゃならんのだ」
 ぼーさんの不貞腐れた声に皆が笑った。


 * * *


「お洗濯終わりましたよ~、脱衣所に置いときましたから」
 十分温まり、休憩室で寛いでいる面々に旅館の人が声をかけてくれた。
 連日の雨天で着替えが無くなったのを見かねた依頼人が、厚意で業務用のランドリーを使って洗って乾かしておいてくれたのだ。
 それぞれが「お手間かけました」「ありがとうございます」「えろうすんません」「感謝します」と礼を述べて脱衣所に行く。
 入口近くに置かれたカゴの中に、洗濯されて畳まれた衣類がまとめて置いてあった。



「俺のはーっと・・・あったあった」
 『大漁!』と書かれた青いトランクスを取り出したのはぼーさんだった。
 真っ青な青海波に真っ赤な鯛と海老が踊っていて、船の旗に『大漁!』と書かれているド派手な模様だ。微妙なセンスのTシャツといい、普通の神経じゃまず買わないし履かない。さすが芸能人の端くれだ。
「派手な下着ですねぇ~どっから買ってくるんです?」
「んー?いろいろよん。時にファンの子がくれたりするしな~コレもそう」
「『大砲』とかだったら滝川さんのモラルを疑っちゃいますね」
「『大当たり!』だったらあるぜ?」
 下半身に大当たり、それの意味することは一つしかない・・・。
「「・・・・・・」」
「ないから!」
 否定しても疑いの眼差しでじっと見られるぼーさんだった。



 青いブリーフを取り出したのは安原だった。
「少年は無難なセレクトだな」
 色はブルー。最近の若者らしいチョイスだ。
「白じゃないのがちょい意外?」
「家にいる時は白だったんですけどね、一人暮らししてからは色モノに変えました」
「なにゆえだえ?」
「洗濯時に色柄と分けるのが面倒になったんです。あと白だと研究室の合宿とかで間違われることが多いので」
「あー、なるほどな」
 合理的な安原らしい理由だった。



「この色すげーな。誰だ?」
「気合の入った色ですねぇ」
 ぼーさんは脱衣カゴから真っ赤なトランクスをつまんで唸り、安原は感心した。脱衣所はすっかり下着の品評会となっていた。
「あ、それ僕のんです・・・」
 少し恥ずかしそうに手を上げたのはジョンだった。
「へ?マジ??」
「ちょっと意外ですねー」
「はぁ、派手でちょっと恥ずかしいのんですが、頂いたもんですさかい有り難く使わせてもらってます」
「貰い物?」
「はい。去年の冬に『寒いからコレ使うといいよ』と頂きましてん」
「赤は代謝を上げるといいますからね」
「もしかして年輩の方からですか?」
「その通りです」
「巣鴨ブランドだな」
「間違いないでしょう」
 老若男女好かれるジョンらしいエピソードだった。



「これはまた・・・」
「シブ派手っていうんですかね?」
「お洒落どすなぁ」
 籠の底には最後には二つの黒いパンツが残っていた。一つを広げてみると、少し光沢のある布地に黒と白の市松模様のブリーフだった。縁は黒く、線が入っている。
「黒だからナルちゃんのか?案外お洒落さんだなー」
「いえ、私のです」
 いつのまにかぼーさんの背後にリンが立っていた。スッと腕を伸ばして下着を奪いさっさと装着する。背が高く引き締まった体のリンがお洒落なブリーフを履くと下着モデルのようにも見えた。
「お前さん下着に凝るタイプだったんだなー」
「見えないとこでお洒落なんて粋ですね」
「似合ってますですね」
「ご自分で買われたんですか?」
「母ちゃんから押し付けられてたりして」
「いや、まどか女史のプレゼントって線もありますよ?」
「・・・ご想像にお任せします」
 全ての質問にノーコメントを貫いたリンだった。真実は如何に?(笑)



 カゴに残るは真っ黒ブリーフのみ。消去法で誰のだか分かる。
「真っ黒ブリーフはナルちゃんか」
「下着まで黒とは徹底してますね」
「洗濯が楽だからでしょう」
「らしおますなぁ」
 それぞれが無難な感想を述べた。
「アレ?でもこれ・・・」
 安原が疑問に思いブリーフを手に取ろうとすると・・・

「失礼」

 横からナルが手を出しサッと取り上げた。そして手早く身に付けて脱衣所を後にする。
 安原はその後ろ姿を首を捻って眺めていた。
「どしたんだ?」
「・・・僕の見間違えじゃ無ければ、アレ博士のじゃないですね」
「へ?どういうこった?」
「渋谷さんが誰かのと間違えたってことどすか?」
「恐らく」
「そうだとしても、何故安原さんが分かるんです?」
 皆のもっともな疑問に、安原は「よく見れば皆さんだって分かりますよ」と答えた。

「アレ、女性モノですから」

「は?」「へ?」「・・・?」
 安原の提言に皆は怪訝な顔をした。
「ても・・・あれブリーフだぜ?」
「ええ、そうです。女性用のブリーフ型ショーツです」
「そんなのあるのか?」
「はい、『カップルでお揃いの下着♪』って売り文句でCMやってましたから」
「そんなCM見たことあるかも・・・」
「見分けるのは簡単です。社会の窓があるのが男用、無いのが女性用ですから」
 ぼーさんは「あー、まあな」と納得し、ジョンとリンは『社会の窓』が分からずとも何となく意味は分かったらしい、納得顔で頷いた。
「そういや、割れ目無かったかも・・・」
「はい、ですから変だと思って確認しようとしたら所長に取り上げられてしまいました。あの時の所長は少し不自然じゃありませんでした?」
「確かに、何も言わずに出ていっちまったよなぁ・・・」
 あーいう話に乗ってこないのは当然だが、いつもなら皮肉の一つや二つ言ってから立ち去りそうなもんだ。なのに何も言わず去った。そこに少しだけ違和感を感じる。

「そこで問題です。アレは一体誰のでしょう?」

「「「・・・・・・」」」
「最初は女性陣のが混ざってるのかもと思いましたが、所長が自ら履かれたのでそれは無いでしょう」
「実は正真正銘ナルちゃんのだったりして。間違えて女性モノ買ったのがばれたくなかったのかもよ?」
「女性モノが置かれてるのは女性用コ-ナーのみです。あの所長が女性用コーナーに行くと思いますか?」
 三人はプルプルと首を振った。罰ゲームでもあのナルちゃんが行くはずがない。ナルでなくとも誰だって行きたくはない。
「となると・・・アレは誰のでしょうねぇ・・・」
 越後屋はキラーン!とメガネを光らせた。
 答えが分かってるくせに言い聞かせるためにもったいぶっている。
 その答えを聞きたいような、聞きたくないような・・・。

「やはり、谷山さんのでしょうかねぇ」

 ビキィッ!!!!
 保護者と父親の額に青筋がたった!
 ナルと麻衣は半年ほど前から付き合っている。
 健康な男女なのだから、それだけ付き合えばそういう関係に進むのが当然だ。
 だがあのナルに、あの麻衣だ。
 二人は清い関係に違いないと保護者ズは勝手に思い込んでいた。

「谷山さんがお揃いで買って、お泊りした時に間違えちゃったとか?」

 ビキビキィッッ!!!!
 さらに保護者と父親の額に青筋が追加された!

「もしくは所長のお洗濯をするくらい、谷山さんが頻繁に出入りしてるのかもしれませんねぇ・・・。もしかして半同棲しちゃってたりして?」

 ビキビキビキビキィィィィッッ!!!!
 さらに保護者と父親の額に~以下略。

「麻衣ィィイイイ!お父さんは許さんぞ!!!」
「ナルッ!お話があります!!」


 過保護なチチオヤと保護者はスゴイ形相で脱衣所を出て行った。

「いやぁ、所長も男だったんですねぇ」
「・・・・・・・・・」
 ニコニコと笑って言う越後屋の隣で、誰に向かってかジョンは黙って十字を切った。
 

 その後の休憩室では、怒り狂った保護者ズに正座させられ、延々と説教を受ける恋人達が見られたそうな(笑)




~~~ その後の恋人達 ~~~


「まだ怒ってるの・・・?」
「・・・・・・・・・(無視)」
 帰宅後、麻衣はナルに平謝りしていた。
 散々叱られ、清い交際をするようにと言われた二人だが、結局は同じ家に帰宅した。何故なら半同棲どころか既に同棲生活をしていたために、麻衣が帰る場所はナルの家しかないからだ。因みに同棲しはじめてから既にニヶ月は経っている。博士は何気に行動が早かった(笑)
 いずれ保護者ズに説明するつもりだったが、今回のことで最悪な形でバレてしまった。
 その原因を作ったのは麻衣だ。
 安原が推理した通り、洗濯物を仕舞う時に間違えてしまったのだ。まとめて置いてある下着を上から掴んで旅行かばんに詰め込んでしまったためにこういう事態になった。
 長時間に渡り二人の保護者に説教され、綾子に笑われた博士の機嫌は当然ながら地の底だ。ソファに腰掛けて資料を読む振りをしながら絶対零度の冷気がリビング中に行きわたっている。今にも凍えそうな麻衣は涙目で謝ったり、お茶を出したりして機嫌をとろうとするがどれも空振りに終わっている。
(寒いよ!寒すぎるよ博士!!)
「だってさぁ~、ほとんど違わないんだもん。間違えちゃうって!今だって履いてるけど違和感ないしさ~」
 横でブツブツと呟いていると、突然ナルがこちらを向いた。
「今、僕のを履いてるのか?」
「え、あ、うん・・・」
 自分で白状したくせに、少し赤くなりながら頷いた。
 麻衣も調査先でナルのだと気づいたが、他に替えも無く仕方なく履いていた。女性陣は多めに着替えを持っていたので洗濯を頼まずに済み、綾子と真砂子にはバレてないのが幸いだ。
 ナルも同じ過程だが、一枚足らずに最後に残していた麻衣のを履くしかなかった。そして脱いだ途端に洗濯の申し出が有り着たものをそのまま持っていかれた。
 恥をかいたのは自分だけなのが博士は面白くないらしい。
「ふうん?」
 麻衣を馬鹿にするように口を片端だけ上げて意地悪げに笑ったと思えば、突然麻衣をソファの上に押し倒した!
「な、ナル!?」
「違いが分からないというなら、教えて差し上げますよ?」
「へ?」
 いつの間にかナルは麻衣の足の間に陣取り、スカートがまくれて丸見えになっている麻衣の下着を眺めていた。
 そして、つつつ・・・と中心の布の割れ目に指を這わし、「ここが違う」と麻衣の耳元で囁く。
 麻衣の顔がカッと赤くなる。
 慌ててナルの体を押しやろうともがくがそこは男と女。土台無理なわけで・・・。
「言わなくても分かってるから!私が言いたいのは見た目の問題で・・・」
「どうせなら使い方も教えてさしあげますよ」
 ナルは割れ目から指をもぐりこませ、直接麻衣に触れだした。
「ヤッ!/////」
「出したり入れたり、なかなか便利ですよ?」
 指を動かしながら、ナルはにっこりとお綺麗な笑顔でのたまった。
 そんなナルを震えながら涙目で睨みつけた麻衣は悔し紛れに叫んだ。

「ナルのむっつりスケベェェエ!!!!!」

 麻衣の叫びに「いい度胸だ」とうっそりと笑った博士は、容赦なく今回の鬱憤を麻衣で晴らしたそうな。
 男性用パンツの使用方法を、身をもって知った麻衣ちゃんでした☆(合掌)


(終わっとけ)



★言い訳★
ぼーさん → 派手なパンツ
安原さん → 無難なパンツ
ジョン → 貰い物多そう
リン → イイ男は隠れたところでお洒落すんのよ!シルク下着ととても迷いました。
博士 → 無頓着。腰細そう。Sサイズでおけー?
と連想してたらこんな駄文が出来上がりました。最後のオチが親父なのは仕様です。こんなので良ければ素敵神社に奉納させて下さいましー。

2011.6.23 イヌダ